○○インでも△△アウトでもなく、MakeJoy! 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第5話

企画畑で20年あまり、「マーケットイン」「プロダクトアウト」の間を行ったり来たりしてきたことか。 外来手法から広く使われるようになったこの用語ですが、ビジネスという現場においてはこの二元 的思考を超えたところに、売れる、売れないという商売の世界があると痛感しています。

今、サウジアラビアの国王が約1000名の部下を引き連れ訪日しています。1000人のお客様を 送迎するのに使われた車が黒塗りのメルセデス・ベンツ。次々と総理官邸に入ってくる艶やかな漆 黒の車、、、「ああ!アレに乗ってみたいなぁぁぁー!」。朝のニュース番組をお茶の間で観ていたわが 子が思わずそうつぶやきました。

私には姉がいます。姉の家に行きクローゼットの中を見ると、たくさんのバッグが転がっていま す。若い頃から「Coach」が大好きな姉のコレクションの山、山、山…シーズンごとにリニューアルさ れるバッグ、ウオレット、手帳などのコレクションに目を輝かせワクワクしています。 私は10代の終わり頃から日記をつけています。ビジネスにおいては業務日誌を綴っています。 その時に使う筆記用具は必ず万年筆です。モンブラン、パーカー、ペリカンなど舶来物、国産のセ ーラー万年筆など10本以上の愛用コレクションがあります。インクの色にもこだわりがあり、好き な色のボトルインクをいくつも使用しています。

車も、バッグも、万年筆も…生活必需品と言われれば、どうでしょうか。冷静に「物」として考えて みれば、ひとつあれば十分。車を「移動手段」という観点ならメルセデスである必要はない、バッグ もひとつあれば困ることはないでしょう。万年筆も、100円のボールペンでも十分役割を果たしま す。メルセデスでもコーチでもモンブランじゃなくても良くて、ひとつあれば生活にはまったく影響し ないものです。それでも私たちは求めています。もっともっと欲しくなる。ついついポチッとサインイ ン…

理屈で考えたら非常におかしな話です。ニーズ、シーズ、マーケットイン、プロダクトアウト etc.‥・私たち送り手はこれらの外来フレームの中で懸命に考え、商品サービスを送り出そうとしま すが、人を突き動かす「欲しい!」の情動は二元的な考え方では説明することができません。 一般的に、ニーズ発想とは「世の中に必要とされていること(needs)は何か」と発想することであり、 革新的な成果に結びつく目標を見つけやすい。一方、シーズ発想とは「自分たちの得意なこと (seeds=種)から発想することで、独りよがりでこぢんまりとした目標になりやすい、と考えられてい ます。マーケット(市場のニーズ)にインしていく考え方、作り手の得意分野でモノを作ってリリース するプロダクトアウトはシーズ発想となります。ビジネスにおいて成功確率を高めるために、このよ うな考え方を駆使してハイレベルな目標設定を掲げていくこと、そこから逆算して何をなすべきか の具体化は、学校を出たばかりの若きスタッフにおいては必要不可欠な思考整理術です。

問題は、事業の指揮をとる経営者や事業責任者がこれらのフレームの中で自社の商品サービ スの開発、リニューアルを実施されていることです。確かに、これらの外来手法を駆使し「売上利 益拡大」と豪語されるコンサルタントが山ほどおられると思います。たいていの場合、モノやサービ スが充実していなかった時代にはこれらの手法が有効であり、課題が整理され成果を出してきた のではないでしょうか。しかし今の時代、現実はもっと複雑です。情報・モノ・サービスで溢れかえ る「超熟」時代を迎えている今、前時代のフレームを壊し、今にフィットする思考を明確するべき時 が来ています。

売れる商品やサービスを送り出している企業ほど、経営者や事業責任者が商品サービスの方 向性を決めています。マーケットイン、プロダクトアウト、どちらの現実をとっても一筋縄ではゆかな いことを皮膚感覚で実感しています。ましてや「お客様に聞いて…」と言ったような顧客にゆだね るプロジェクト企画は、企業として思考放棄としか言えません。

売れる商品やサービスには二元思考では収まらない力(魅力、世界観、顧客体験)が内包され ています。それらは顧客に「どうしてもコレが欲しい!」「やってみたい!」「そうそう!欲しかったのは コレ」と言わしめます。モノをたくさん所有し、ネットやリアル店舗から、新しいモノが山ほどリリース される毎日にありながら、それでも「○○に乗りたい!」「○○のバッグが欲しい!」という衝動で、そ れは「狂気」に近い感覚です。

多くの商品やサービスが「必需品」では無くなった今、「わたしの今日、わたしの明日にどう関係 するのか」「自分の、今足りものを満たしてうめてくれる」「自分のためにある商品サービスだ」と顧 客が実感できる商品サービスであること。「どうなれるのか」「どうなると嬉しくなるのか」を満たして くれる、それは商品サービスを通して「喜びの顧客体験」を提供するということに他なりません。一 人一人のお客様の顔が浮かび、有り有りとお客様の「嬉しい」の歓喜をイメージできますでしょう か?

今まで言われてきたようなフレームを超え新しいパラダイムで、御社は勝負できているでしょう か?自社の主力商品サービスが《お客様の「喜び」を満たしている!「喜び」を創造している!》そう 胸を張って言える自信こそが机上ではないリアルなビジネス環境で勝つために、絶対に必要な思 考です。そしてビジネスを推進する原動力となっていきます。