「お客は何もわかっちやない」と言い始めたら黄信号。 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第1話

大学を卒業して、婚礼印刷のトップメーカーに5年、転職後、全国展開する洋菓子メーカーに10年、約15年あまり販促プランナーとして仕事をしていました。この実務経験から「メーカー」に一番求められているのは「商品力」である、ということが皮膚感覚として染みついています。

両社とも「商品開発部門」は創案者である「社長」直轄の部門でした。日々創案者のそばで、商品開発の企画立案、プロモーションの実践をしながら、商売の原理原則を体得してきました。「売れる/売れない」という泥臭い商売の世界において、両社で学んだことは計り知れないほど大きく「買うか、買わないか」というのは、本当にシンプルなことだと実感しています。

どちらの会社も時代を風靡しながらも、事業承継がうまく調わず、結果的にはM&Aによって親会社が入ることになりました。中でも忘れられない思い出があります。洋菓子メーカーに初めて親会社がやってきた日のことです。

商品開発部門を担当される新しい上司たちは、親会社である菓子メーカーでケタ違いのビジネスを成功させたエリート上司ばかりでした。彼らはありとあらゆる資料を提出させ検証し、天を仰ぎ(ほんとうにそうしていた)大きな声で「この会社はガラパゴスだわぁ!市場調査もマーケティング何にもありゃしない!」と叫び、「原始人…」と小さな声でつぶやきました(笑)。

さて、その後、数億円かけてCIを変更し、大手のコンサル会社によるマーケティング戦略を実施したと伝え聞いています。あれから約10年、店舗数は増加していますが、売上高は当時の2割減となっています。これはどうしたことでしょうか。

洋菓子メーカーの創案者は、真に「お菓子」の好きな人でした。競合商品や自社商品の試食をする商品会議では、自社商品もライバル会社のお菓子にも敬意はらい、全身全霊で試食していた姿が忘れられません。24時間365日、洋菓子のことを考え、顧客の求めている商品と、お菓子を通して暮らしを豊かにしていくのだと本気で考えている創案者でした。

そして、何をおいても一番大事にしていたのは、売り場から上がってくる店長たちの「日報」でした。現場からあがってくる情報は会社の「血液」である、と明言し、隅から隅まで目を通していました。お客様にとって「美味しい」を常に考えている、お客様目線の人でした。「会社の真の支配者は、お客様である」とは、社長専門コンサルタントの第一人者である—倉定氏の言葉です。その言葉は、商品についてもそのままあてはまります。商品の真の支配者は「お客様」なのです。

お客様が欲しいか欲しくないか。それが売上という数字になって現れます。これらは、当たり前のことだとお感じになると思いますが、実際の現場にいると、この当たり前のことを忘れてしまうケースがほとんどです。日夜商品について考えているプロフェッショナルゆえのジレンマですが、そのことをなかなか受け入れることができないものです。「お客さまの気持ちがわからない、何が欲しいのかわからない」と自覚できている会社はまだマシな方で、ほとんどは自社の理念を押し付け、自分たちの思い込み、自社の都合で商品開発をしているのが現状です。マーケティング戦略や手法が次々と現れる昨今、大手企業ではビッグデータを活用したマーケティング戦略も実施されています。

100%それらが成果を出しているなら、あの会社も、あの会社も、と日本の市場は活性化しているはずです。しかし、情報化が進んだ世の中であっても「お客さんの欲しいものがわからない」という声がたくさん聞こえてきます。「買う」という行為は、人の心理や感情に非常に左右されるものです。心理や感情は、外的要因に左右されることもあり、さらに、その時の気分や感情に左右されるものです。

生活の役に立だない商品を「欲しい」「買いたい」「体験したい」と強烈に希求するのは、どうしてでしょうか。数値や計画、マーケティング的な発想を超えた世界がそこにはあるのではないでしょうか。ご自身が欲しいものを買うときのエネルギーを思い出してみればご理解いただけると思います。主力商品の売上推移(直近3年)を見てきたときに、横ばいになってきた…という流れを見逃してはいけません。それは「お客様」の求めているものとギャップが出ているということです。お客様が「いらない」と言いはじめているシグナルです。このときに「付加価値をつける」ことこそが商品寿命を延ばすことだと考えて、施策していきます。が、今ある商品の欠陥を修正しない限り、どんなに付加価値をつけても、ますますズレていくばかりです。

お客様とプロは、買い物への感覚が「真逆」です。ものを買ったり選んだりすることにかなりのギャップがあります。プロはついつい、材料や工程にこだわりますが、お客様は無関係に、食なら「美味しいか、美味しくないか」であり、ファッションなどのデザインに関わるものであれば「好きか、嫌いか」です。数値で選んだり考えたりしないものです。動物的な直感です。どんなに素晴らしい材料と工程を踏んでいても、その人にとって美味しくないものは欲しくない。好きじゃなければ買わない、というシンプルな世界です。そして私たちプロよりもはるかに商品についてよく知っている、というのが現代のお客様です。

商品に対して、会社の理念優先、会社都合になっていないでしょうか。お客様の無言のサインを一刻も早く感受することが要請されています。お客様の「欲しい」に対して真摯になる時がきています。