ブームは読まずに「マイブーム」を狙え! 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第10話

先日、都内で小さな米店を営む方ご夫婦から相談を受けました。近隣約400世帯のお客様を相手に商売をされている昔ながらのお米屋さんです。かつてはお屋敷のそびえ立つ地域でしたが高齢化がこの三年で急速に進み、相続できない世帯が増え転出。街は新興住宅地さながら新しい戸建住宅や集合住宅ラッシュ。それに伴って20代後半から30代の若い子育て世代が急増されている、ということでした。

相談内容は「若い世代に来てもらうお店にリニューアルしたい」ということです。確かに平日の午 後、店舗に行く道すがら目に入ってくるのは新しい保育園、ベビーカーを押す若いママたち・・・、おばあちゃんとママとベビーカーという家族でのお散歩風景、子育て世代と親世代(シニア)という印象を肌で感じます。

今まで高齢者の多い地域で古くからの既存客に支えられていた米屋。オートバイで「御用聞き」して回り、FAXや電話での注文、チラシDMで売上の見通しがたっていた。しかし地域の世代交代 で、若い人にお米をどうやって販売していけば良いのか。店主曰く「コンビニでも米を販売する時代です。若い人のブームとかそういうものを取り入れていくことも必要だと思うのです。そのブームというのがむずかしい・・・さっぱりわからない」と頭を抱えていました。

ブームやトレンドについて、知識としてある程度考えてゆくことは必要不可欠です。例えば、洋菓子業界周辺では「抹茶」ブームが続いています。様々なお店で抹茶を使ったツイーツ、焼菓子を目にします。コンビニのアイスケースを覗くと、抹茶関連のアイスがたくさんリリースされていて驚きま す。しかし残念なことに、抹茶本来の味、風味が感じられる上質なものは非常に少ないです。抹茶は光や湿度に弱く非常にデリケートで、本質的な風味を表現することはとても難しいのです。「ほんとにブームきてる???」誰からもススメられたことがないな、というのが実感です。

おそらく抹茶商品が多いのは、インバウンド需要をとらえての各社商品戦略の一つです。ご存知の通りブームやトレンドというのは提供側で仕掛けています。ファッショントレンドでいえば、流行色についても今年の秋冬、2018年の春夏ぐらいまで決まっています。食のトレンドも一年後ぐらいの流れは、業界の中でざっくりと出来上がっています。

トレンドやブームには2種類あります。一つは提供側が仕掛けているもの。もう一つは消費者の中から自然発生したもの。口コミ、と呼ばれるものです。もちろん、この二つが化学反応を起こして起爆するケースもあります。消費者の中から発生している場合、自分の周辺で3〜5人くらいが「これキテるよね」「これすごく気になる」「これが欲しいな」そんなセリフといっしょに教えてくれるものが

「ブーム」「トレンド」だと考えられます。テレビや雑誌などのメディアや売り場で多く目にする、ということもトレンド情報の一つではありますが、プロが思いもつかないようなところから、口コミで広がってゆくのが本質的なブームやトレンドです。

商品戦略において、マーケティング活動の一環としてトレンドを読むこと、を取り入れることは基本中の基本です。自社商品サービスの売上が下降している斜陽化している、という場合は、トレンドから外れていることを疑う必要があります。つまり「古くなっている」を自覚することです。しかし、トレンドに振り回されることは本末転倒です。それはあくまで情報のひとつです。「はやりとすたりはワンセット」ということも知っておかなくてはなりません。

企業の成長とは「それ自体が変化していくこと」です。既存の考え方やカタチになっているものをベースに商品の研究をしても、ぜったいに独自性の高い商品に生まれ変わることはありません。他の成功したシステムを横展開すれば、と考えがちですがそれは過去であり、他社は他社なので す。他社と同じでは馬群に沈むのです。

大切なのは、御社の商品に対する「考え方」です。考え方なくして独自性は生まれません。お米屋さんだったら、「米」についてどう考えているのか。自社のいちばん自信をもって打ち出せる特長、商品やサービスは何か。お客様に支持されていることは何か。「そんなものはあるように思えないなー。普通の米屋ですよ・・・」、たいていそうおっしゃいます。しかし、そこに時間をかけて深掘りすれば、独自性につながるヒントにたどり着きます。

このお米屋さんご夫妻には「マイブーム」がありました。それは土鍋で炊くのにいちばんフィットする

「お米」の研究です。6年前の震災時、あるママが電気釜をやめて「鍋でご飯を炊いてみたら美味しかった」と喜んでくれたそう。それをきっかけに、お子さんのいる家庭にいざという時のご飯の炊き方を教えたり、「土鍋で炊くお米」を研究し仕入れてみたり・・・。この時点ではじめて、若い方の土鍋需要やトレンドについてリサーチします。お客様の要望とフィットすれば、リニューアルコンセプトがかたまっていきます。

いつもお伝えすることは「ブームではなく、マイブームをあたれ!」ということです。マイブームが独自性の高い商品に繋がり、ひいてはヒット商品につながっていきます。経営とは商品の研究であり商品戦略そのものです。商品が良くなければ絶対に売れません。商品とは、提供する側が売りたい

ものを提示したものではなく、「今、お客様がそれを手に入れると嬉しく思うものやコト」の半歩先、または一歩先を提示したものです。今、目の前にいるお客様が何を要望しているかの研究に他ならないのです。