商品リニューアルは投資ではなく「企業努力」 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第6話

先週のニュースで注目したいのが、住宅事業の立て直しに乗り出したヤマダ電機、社長直轄でブランドを立て直すと宣言したサマンサタバサです。この二社だけでなく、大手、中堅、中小企業を問わず商品戦略から営業体制の見直しなど、創業者である会長や社長が再びトップとして指揮をとり再編していく事業体が増えています。

そんなニュースを知り、このブログを読んでくださっている方から「商品リニューアル」についての相談がありました。仮にM屋としておきましょう。M屋は都心から30分ほどの商店街にある小規模の和菓子屋さん。震災を機に、長男に代を譲り、今は2代目社長である息子さんにお店を任している、とのこと。息子さんはどちらかというと職人肌。事業経営よりもコツコツと作っている方が好き、ということで先代からのレシピをコツコツと守り商品構成もほぼ創業時に近い状況で経営されているということでした。

どこも競争が激しい中、和菓子需要も低迷、当然M屋も年々売上が落ちており、このままでは経営の存続が難しくなってしまう。今ある商品群をリニューアルすることでヒット商品をつくって、起爆できないか、ということで、会長自らが当社に来られました。

まだ40代の社長一家は小さなお子さんもおられ、和菓子職人さんをパート社員を抱えています。先代の不安にも大いに共感でき、胸に迫るものがあります。当社に来るにあたって、社長である息子さんは、先代にこう尋ねたそうです。「商品リニューアルをする必要があるのか。いったいいくら投資するのか。それによってリターンはあるのか」と。

さらに「自分なりに現状を何とかしたいと思って、マーケティングも勉強しているし、そういう勉強会にも参加しているんだ。あまり口出ししてほしくない」と続けたと言います。

いったん息子に社長を譲った先代としても、以前のように自分が仕切って、商品のリニューアルしてもうまくいかないのではないか、という潜在的な本音が、煮え切らない態度となって、当社にご相談にいらしたのです。 商品リニューアルは事業経営を大きく動かす、根幹をなす、非常に重要な商品戦略です。これを「投資」と捉えるか否かで、その後の取り組み方、実践、成果が大きく変わっていきます。確かに、競争をしなくてもモノが売れる時代には、商品やサービスに関わる商品戦略は「投資」的な意味合いが強かったのではないでしょうか。しかしこれだけ情報過多、供給過多の今、「投資」そして「リターン」の発想が通用するほど、商品戦略は生温くはありません。それは社長の「お勉強している」の言葉にも表れている通りです。

商品サービスのリニューアルは、企業が永続経営をしていくための当たり前の戦略です。お客様をお迎えするために店内を清掃し、清々しい環境を整えること。入店の際には笑顔でご挨拶すること、、、。企業活動の原点である環境整備の実施とおなじくらい「当たり前」に実施する施策なのです。

南カルフォルニア大学の著名な心理学の研究者アンドレア・モラレス氏が2005年に行った調査があります。「ジャーナル・オブ・コンシューマーリサーチ」という消費者研究の学術誌に発表されました。「努力は報われるか」というテーマで、76人の学生を対象に実施しました。コンビニのような小売店を模した会場で、2つのパターンの店を作りました。売場面積、商品アイテム、店員数はまったく同じです。

A店は店内清掃や陳列の並び替えなど店員が積極的に商品配置をするなど、店員の行動力が感じられるお店。一方のB店は最低限の商品配置で店員はレジの前にただ立っているお店です。被験者はA店、B店それぞれに入り商品を確認。その後に「いくらまでならこのお店でお金を使ってよいですか」という質問をされました。

その結果、被験者はA店に10.5ドル、B店には8.2ドルまでの支払いをする。と答えたそうです。店員の積極性や商品配置の工夫の有無など、被験者は店側の努力の程度に意識的に気がついていない状況下でのテストにもかかわらず、努力がみられるA店には「2ドル多く支払っても良い」と答えたのです。

この結果は何を「顧客は無意識であっても店側が努力しているかどうかを正しく感じ取っている」ということを実証しています。一生懸命に動き回り努力しているお店や人に対して、それを無意識に感じ取り、その努力に応じたいという心の働きが私たちには備わっている、ということです。

「投資」という考え方の根底には「リターン」という会社の期待が見え隠れしています。永続経営を実現している企業の多くには「わが社の事情は一切無視して何がなんでもお客様の要求を満たす」と暗黙知があります。 社長、会社やお店の都合で、商品寿命の切れた商品をラインナップしたままで良いのでしょうか。お客様は、モラレスの実験でも立証されているように、お店の努力を無意識に正しく感じ取っています。頑張っているお店ほど、人はたくさん買い物をしてくれるのです。 商品サービスのリニューアルは「投資」ではなくて「企業努力」です。今、お客様の要求を満たす商品を整えることは、規律・清潔・整頓・安全・衛生といったような、当たり前のことで、企業活動の原点となる環境整備の一つなのです。