事業ステージを上げる外部視点の生かし方 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第101話

新春、ある経営者さまから「自社商品のセミナーにお客様が集まらなくなってきているので相談したい」という案件がありました。弊社コラムを読んでくださっていて、提供しているコンテンツのリニューアルをお考えになったそうです。業界は異なりますが、例えば食品メーカーであれば「リリースして一年、二年とパーンと売れてきた商品が、三年目に入ったらパッタリ売れなくなって伸び悩んで困っている」といったご相談と共通のポイントがあります。

 

ヒアリングさせていただき実際に現場に行ってみますと、ライバル会社がどんどん変化を起こしている時、「去年と同じ内容のセミナー」「去年並みの商品ラインナップ」、新商品も「トレンド感がない」ゆえに、お客様から見れば例年と同じように感じてしまう残念な状況であることが多いものです。接客にしてもマニュアル通りで、ひやりとした印象です。現場にはピンと張った危機感がなく漫然とし、現場特有の活気の「気」がなくて、滞った雰囲気です。

 

ここ数年、わたくしたちの暮らしにおいて自然災害のリスクマネンジメントが叫ばれています。日常の過ごし方において「危険だと思われている時が一番安全で、安全だと思われている時が一番危険」という法則があります。暮らしもビジネスにおいても同じではないでしょうか。この法則と照らしあわせて、現場を点検していく姿勢がとても大切です。

 

そして、こうした点検においては、身内では甘くなりますし、過去の成功体験の延長線上で点検するため、視野が狭く、視点が低くなりがちです。外部視点を入れるだけで時短につながり、集中すべき事柄へフォーカスできます。まずは「外部視点」でみた率直な印象をお伝えし、一緒に考えることから弊社のコンサルティングが始まります。

 

一緒に問題点をあぶり出す上で、今どういう時代になってきているのかを共有しておきます。まず人口統計の視点です。ご実感されているように、暮らしの中で少子高齢化は圧倒的に進んでいます。わたくしたちも年をとるように、かつて「アクティブシニア」としてターゲティングされていた中高年層が人の手によって支えられなければ生きてゆけない「重老齢シニア」となっています。ご自身の親御さまはいかがでしょうか。そして、老老介護の比率が高まっています。

 

また、世帯類型別世帯数の推移データではいわゆる「ぼっち世帯」と呼ばれる「単独世帯」の増加、さらに2018年秋、初の「女性の就業率70%超」で共働き世帯の急増です。高度経済成長期を牽引してきた「男性社会の構造」「男性的価値観」「専業主婦の世帯の当たり前」「高齢者への配慮不足」など、従来の生活者環境がガラッと変化しています。

 

さらに総務省が公開しているデータから「流通情報量」という視点。今わたしたちは人類史上例をみない「情報洪水」の中で暮らしていることがわかります。その一方でわたしたちの「消費情報量」は微増しているだけで、流通情報量とは大きく乖離しています。その反面、おもしろいことに、インターネットを毎日やらない人や実家にネット環境がない人もまだまだ多く、テレビや新聞などの従来メディアから情報を得ている生活者が一定数いることがわかっています。スマートフォンはあるけれどSNSはしていない、とか電話とFAXでやりとりしている人がまだまだいるということです。

 

ある意味、生活者環境は「多様化」というより、変化のスピードについてゆく人、ついてゆかない人、そしてついてゆけない人を生み出し、さまざまな状況が混在して「混沌としている」のが今という時代です。これは日本の企業が今までに経験したことがない状況です。この現実に真摯になれるかどうかが、今後のビジネスの行く先を決めてゆきます。

 

今でもアメリカから入ってきたマーケティングの世界では、消費者を「ターゲット」と表現しています。かつてのように、マス媒体によって大きな声で宣伝広告し「強制的」に商品サービスを売り込み標的を撃ち落としていく、という考え方は古くなっています。古いだけでなく、こうしたやり方が「嫌われる」時代となっています。生活者が自分で取りにゆこうと思えばいくらでも情報が出てくる時代、生活者であるお客様は本当によくわかっています。企業を、企業姿勢を、そこに関わる一人一人をよく見て知っています。ターゲット的な考え方でしかお客様を見れない企業姿勢は見透かされています。こういった1つ1つの積み重ねで、真にお客様に必要とされる企業が生き残り、必要とされていない企業の「淘汰」がはじまっています。

 

時代がガラッと変わってしまった今、変化対応と変化創造戦略である商品リニューアルの視点が要請されています。そして、わたくしの商品リニューアル戦略において最も重要なポイントは戦略でも戦術でもありません。ノウハウは後、先に考えるべきことはそれらの上位にある「理念」です。これが商品リニューアルを成功させるポイントです。理念をミッションと呼んだり、ビジョンと表現したり、企業によって様々でしょう。シンプルに「御社が何のために存在するか」ということです。御社が、お客様にどんな価値を届けることができるのか。なぜ、なんのために御社の商品サービスがあるのか。何のために御社がこの世に存在しているのか。そして、それは誰のためにあるのか。誰に伝え届けたいのか

 

 

理念は、商品リニューアルの土台にいらっしゃる社員や協力企業、そして御社を支持してくれるファンにとって「行先を見極める」北極星となります。この理念に共感し、そして心に響き波及するという意味で「響感(きょうかん)」してもらうことが、これからの時代のお客様を増やしてゆく大切なポイントとなります。

 

お客様=「ターゲット」と誰が決めたのでしょう?お客様=狙い撃ちする「標的」とするのは前時代的な考え方で、誰かが定義した「常識」です。少なくとも今のお客様が求め、お客様の幸せにつながる定義ではありません。同じくノウハウとして「つながりづくり」の機会を作り「囲い込む」といった手法もまた「うざったい」と感じられ、見透かされています。

 

お客様は的ではありません。わたしたち生活者の真ん中には「心」があります。その心は分子のようなもので、企業の理念とお客様の心が接触したとき、分子同士がプルプルと響き合うイメージです。この混沌とした時代、本質的に、そしてシンプルにお客様が求めているのは「心でつながる」ことではないでしょうか。そして、この心のつながりこそ最強のつながりです。

 

BtoB、BtoCという考え方を超えて、ハートからハートへ伝播してゆく「HtoH」の考え方をわたくしのコンサルティングではお伝えしています。マーケットボリュームが変わり、ライフスタイルが変わり、情報を通したコミュニケーションが変わりました。過去の成功法則を乗り越えて、新しいコミュニケーション方法で事業ステージを切り拓いてゆきましょう。外部視点を有効に活用しながら、パラダイム(モノの見方や考え方)をシフトさせ、飛躍へ。