自社の強みはわからなくて良い 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第102話

自社の「強み」や「魅力」が、いまひとつわからない・・・。弊社セミナーやスポットコンサルティングでいちばん多い質問です。

 

経営計画書作成やマーケティング立案の過程で、自社の強みをあぶり出すために「SWOT分析」をやったことが、あるにはある。しかし「作らされた感」があっていまひとつ納得していない。従って自社の現場に生かされていない、と。さらに深くお話を伺ってゆくと「うちの強みなんて、、、無」とか「先代から継いだばかりで考えたことがない」とか、そもそも「強みなんて発想を忘れていた」という言葉が出てきたりします。おもしろいことに、事業規模を問わず、悩まれている企業がとても多いです。

 

強みに関してモヤモヤっとしているのは「いまの時代において」または「いまのお客さんにおとって」という前提が隠れているからではないでしょうか。時代が変わってしまってわからない、自信がない、という本音です。対面でお会いし、じっくりとお話をお聞きしていると「かつては時代が〇〇だったから黙っていても売れたんですよね」とか「昔は営業しなくても取引先が取引先を呼んできてくれて、自然と商売がひろがっていった」というフレーズがつぎつぎと溢れ出してくる瞬間があります。実はここからが、御社の商品リニューアルがスタートしてゆく、大事な入口となります。業績を伸ばしてゆくポテンシャルが発露する瞬間なのです。

 

かつて「強み」で勝負されていた時代、御社独自のストーリーが必ずあります。ここで、「社会が変わった」「市場が変わった」という視点を一度疑ってみることが商品リニューアルで事業を大きく飛躍させるコツです。御社ビジネスが、既存商品や戦力商品が伸びない、売れない、縮んでゆくのは「市場飽和しているから?」「モノや情報が溢れているから?」「それは本当?」そんな風に、常識を疑ってみることです。

 

わたくしどもは、市場飽和が原因ではない、と考えています。

変わったのは「人間」です。

御社ビジネスが伸びてゆかないのは、生活者の心の「成長」を見逃しているからです。人の心がもつ根源的な欲求を無視しているからです。

 

昭和から平成そして新しい時代へ、わたくしたちが生きる世界は「進化」してきました。先祖たちの力もあり、戦後日本の暮らしは平和に恵まれました。そして生活はどんどん豊かになりましたし、精神的な健康度も高まりました。1995年頃から急速にインターネットでを通して世界がつながり、地球規模で人と人とがコミュニケーションを図ることができるようになりました。そして今、少子高齢化と人口減でマーケットボリュームの大変動。共働き世帯の増加、女性の就業率も昨年7割超えです。働く現場のブラック企業化、さまざまなハラスメントがネットを通してむき出しになりました。

 

こうして書いている本日も、ネットニュースの配信によれば、シンガポール発祥のスイーツをそっくり真似して商標登録した日本企業のバッドニュースが話題になっています。こうした残念な企業姿勢もインターネットを通して世界で露わになってしまう時代です。わたくしたちは、いろんな情報を知る自由、そしてそれらを得るためのツールを手に入れました。閉じられた世界を打ち破り、世界をより豊かに広げる自由を得ました。そこから小さなトライ&エラーを繰り返しながら学習し、コミュニケーションの方法をリニューアル、内面的な世界を「進化」させてきました。わたしたちはより恵まれた状況、成長を心の底から望み、叶えてきたのではないでしょうか。

 

産業心理学者のマズローは「恵まれた状況を経験した人間は、劣悪な状況には満足しなくなる」「人間が成長し、精神の健康度を増すにつれて権威主義的経営管理はいっそう深刻な問題を引き起こすようになる」と伝えています。今の時代に生きるわたくしたちは「劣悪な状況」には満足しません。劣悪な商品サービスは淘汰されてきました。「より良い商品サービスだけが残ってゆく」。そうさせているのは外部環境ではなくて、成長した「人の心」なのです。高みを目指して努力する企業、わたくしたち生活者を成長させるような商品サービスでなければ選ばれない時代がやってきています。

 

マズローの「欲求の階層」を思い出してください。第1ステージの人間としての生理的欲求。第2ステージの安心安全への欲求、第3ステージが社会的欲求です。そして、今わたしたちが立っているのが第4ステージで、人間としての尊敬・承認・尊厳への欲求です。いよいよ向かってゆくのが、いちばん高次である自己実現の欲求となります。今後ますます時代が成熟してゆきます。人間の欲求はより高次元の喜びを目指してゆきます。身辺を思い出してみれば、プレミアム商品やサービスがヒットしている予兆があります。もちろん、自然災害や国際情勢などの突然の変化によって万が一、政治・社会・経済の基盤が大きく崩壊した場合は、こうした欲求の階層を逆行していくことになるでしょう。

 

昨年話題となった「#Me too」に関連するセクシャルハラスメントに対する抗議や職場でのパワハラ、働き方改革も、人間が変容し「新しい欲求のステージ」にシフトチェンジしたことを示す自然な流れと考えられます。「昔は許されたけれど、今の時代は許されない」といった時代が変わった的な表現が一般的です。さまざまな欲求を満たした「人間」が変わったのです。「人の心が成長している結果」なのです。

 

人は成長したがっている。ここを肚で感じることが商品リニューアルの大きなポイントなのです。ますます成熟してゆく未来、わたしたちは自然の循環のごとく心の成長を求めてゆきます。より次元の高い欲求「自己実現」を叶えたいと望みます。自分自身の感情が揺さぶられる体験、より高次元な「喜び」を手に入れたいと願います。「願望」や「希望」、「夢」や「わくわくすること」、そんな情緒を叶える商品サービス、人生を変えるような商品サービスが求められているのです。

 

御社の商品サービスが伸びてゆかない根源は、人口減や市場飽和が原因ではありません。昨日までの「強み」をリニューアルしましょう。そして、未来から逆算した御社の「強み」を御社事業の現場に落としこんでゆく、実装の仕組みづくりに取り組むチャンスです。刻々と進む変化の中で、スピードをもって本質的な「強み」のリニューアルに取り組まれることが肝要です。