主力商品を戦力化させる“共感リニューアル”の具体策 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第103話

新しい年になって1ヶ月が過ぎようとしています。この1ヶ月、強く感じたことは、街や人が「ゆっくりになっている」ということです。また、人の求めている価値観が「ゆっくり」とか「のんびり」とか「やさしく」といった、今までのハイスピードの時代とは真逆の方向性に進化していることです。

 

都内、どこを歩いていてもシニアの方々がたくさんいらっしゃいます。会話の様子を拝見していると、思い出せないことを引き出しながらの会話、コミュニケーションがゆっくりと進んでいます。杖を片手に両手にお持ちだったり、車椅子に乗っておられたり、こうした移動スタイルも当たり前の風景です。若い方も順応し当たり前のように対応されています。考えてみれば、環境が「たくさんいる」方達に合わせて進化していくのは当たり前のことです。

 

暮らしのなかで、そうした「当たり前」に気づくことができるのに、ビジネスにおいては旧態依然を自覚しながら「変われない」状況であったりします。ゆえに、わたくしたち生活者の、毎日の暮らしの方が一歩も二歩もリードしています。企業の経営者層は「裸の王様」状態です。そんなことを強く感じさせたのが、先日訪ねた都内の私立病院でのことです。その病院は大学病院で創立100周年の記念事業として、内外装の大規模リニューアルを行っていました。その変貌には驚きました。K病院としておきましょう。

 

リニューアル前のK病院は全体として古くて冷たくて暗い印象です。しかしリニューアル後の院内は、いっぺんに春がやってきたような明るいおだやかな雰囲気になっていました。細部をみてみると、青白く光る蛍光灯が白熱灯に変わっていました。木材を取り入れてある内装で、温かさが伝わってきました。壁紙や床材も灰色からオフホワイトになっていて、なごみました。院内の壁が明るいトーンの配色になり、そこには樹木のデザインがさりげなく施してあり、やわらかい光の間接照明に包まれた空間で、ストレスフリーの時間を過ごすことができました。

 

こうしたリニューアルは、建物だけではなく、スタッフの心にも変化を生みます。リニューアル前は、看護師さんに話しかけると「人手不足で大変なんですよ!ちよっと待ってください!」と苛立たれるシーンが当たり前でした。しかし、リニューアル後は、さわやかな笑顔がありました。情報の伝え方も患者目線になって、ゆっくりと怖くない表情で伝えてくれます。スタッフも医師も全体で「やさしく」なっていると感じました。基本構造は変わっていないし、担当医もそのままです。ですが、病院の印象がガラリと変わりました。「価値」を感じることができ、リニューアルに「共感」できました。そして以前よりもK病院が好きになりました。

 

特にK病院のリニューアルに共感したのが病院内の表示サインです。ユニバーサルデザインを採用し「受付」や「診察室」の場所を導く誘導の文字がとてもわかりやすかったのです。文字が大きく、はっきりとしている。見やすい配色で視認性が高くなっている。さらに文字のプロポーションも美しく見ていて苦痛ではないのです。周囲の雰囲気に調和しています。人と人とがぶつかったり、行き先を間違えるとことがないよう流れをつくり、効率的、効果的にわたしたちを誘導してくれました。待合での電光掲示板にも見やすい工夫がありました。院内の案内板も文字が大きく読みやすい。高齢者でも迷うことなくスムースに受付や検査、診察、会計などを済ませることができます。お知らせ文書やカタログなども文字が大きく見やすくなっています。カラー配色もやさしい色合いです。

 

病院や学校などの公共施設のようなたくさんの人が集う場所において、誰もが「わかりやすいデザイン」で正しく情報を得、コミュニケーションすることができるデザインを「ユニバーサルデザイン」と呼んでいます。インターネットで調べると「文化・言語・国籍や年齢・性別などの違い、障害の有無や能力差などを問わずに利用できることを目指した建築(設備)・製品・情報などの設計(デザイン)のこと」と説明されいます。

 

病院や介護施設にゆくと意図して導入されていますが、日本全体で考えればまだまだユニバーサルデザインは積極的には導入されていません。実際、わたしたちが手にするツールの文字は小さく、ぎっしりと行間がつまっていたり、ページはめくりにくく、配色もチカチカしたり、逆にぼんやりしていたりといったものが多いです。それらは、若者中心、働き盛りが大多数だった時代の名残です。人口動態が変わった今、日本中の商品サービスが、本来は変わらなくてはならないのです。ゆえに、先んじて変わった企業にたいして、生活者は無意識に変化を感じ取り、その姿勢に「共感」する下地が生まれるのです。

 

毎回お伝えしていることですが「常識」は、ある時からパッと切り替わる、そんな風に感じます。しかし、実際には「変化」には必ず予兆があります。今まで見ていた文字が大きくなった。青、緑といったカラーが温かみのあるパステルカラーに変わっていた。小さな文字の案内板が読みやすい字になった。スタッフの制服が変わった、対応が変わった・・・。今までの当たり前が「パッ」と魔法のように変わる。次の日からそれまでの常識が急に「古臭く感じる」のです。まさに時代の変化が芽吹く予兆のある今、こうした変わり目にあることをしっかりと認識した上で、御社ビジネスのリニューアルを仕掛けてゆく時期です。

 

こうしたお話をさせていただいた時、ある経営者は「そんな荒唐無稽な・・・」とおっしゃいました。お伝えしていることはファンタジーではなく、目の前に展開している現実です。荒唐無稽、とおっしゃった社長は印刷関係の事業をされています。例えば、ちいさな子供や高齢者にとって「紙をめくる」ということは実は簡単なことではありません。例えば、レストランで紙ナプキンをパッと広げられない、大事な契約書や説明書のページをスッとめくることができない、そんな場面に出会います。契約書などの重要な書類であればわたくしたちの不利益になり、不満につながってゆきます。

 

日本の社会はマーケットボリュームが変わりました。いままで眠って息をひそめていた「不満」が「大きな声」や「叫び」になって、世の中に吹き出す可能性が高まります。逆に言えば、今、わたくしたち中小企業はチャンスで溢れています。大手企業は組織体としての動きができているので、そうそうパラダイムシフトに取り組むことはできません。中小企業は逆に「柔軟さ」を武器に生きてゆけます。

 

わたくしの商品リニューアルも、時代の変化に合わせて変化しています。今の時代はお客さんの心に、情緒に訴える「共感のリニューアル」が求められています。御社ビジネスにおいて「商売」としての価値創造だけではなく、社会を変えてゆくようなパワーが求められています。つまるところそれは企業の、経営者の「想い」であったりします。わたくしたち生活者が、人間が心動かされるキモがあります。

 

御社の「新しい考え方」をコミットしましょう。打ち出したら全体構築し、御社ビジネスに落とし込む。半年後にはその仕組みが回り出すように設計してゆくこと。共感の「商品リニューアル」に一歩一歩取り組んでゆくことで、御社のファン=支持者を増やしてゆくことが、これからの中小企業には鉄板になってまいります。お客さんの中に、どれだけの共感と共鳴がうまれてゆくか。心に根ざす“共感の商品リニューアル”で御社が、そして社会が変わります。アイデアを実装に落とし込んだ時、革新となります。イノベーションの花が咲き誇る「春」はすぐ近くまで来ています。