「選ばれる」商品の法則〜4つの視点俯瞰法〜 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第108話

冬から春へと季節が移り変わり、来月の今頃は桜のシーズンです。さて2019年が2ヶ月が過ぎてゆきました。商品サービスを巡る世界は刻々と変わり続けています。実際にコンサルティングの現場でお会いするさまざまな企業のトップ、そして幹部の皆様からは実感のこもった言葉で「お客さん(顧客、消費者、エンドユーザー、最終消費者)が変わった」というお話がたくさん出てまいります。それゆえ、さまざまな施策を通して商品サービスを磨き上げ「お客さん」の変化に対応してゆきたい、既存商品を磨き上げてヒット商品を送り出したい、という熱い想いを吐露されます。

 

わたくしどものように経営者の皆さまのお手伝いをするコンサルタントもまた声を大にして「お客さんが変わったんですよ!」または「マーケットが変わったんですよ!」といった話をお伝えしていることも強く影響しているはずです。コンサルティングの現場だけでなく、日々流れてくるメディアからの情報やネット上のコンテンツを見ていても、時代の変わり目にあって強い口調で諭しているような印象です。

 

日々の変化を前にした時、わたくしたちは「恐怖」や「不安」に似た感情を先ず抱きます。それは大企業であっても、中小企業、個人事業主であっても同じです。モヤモヤっとした見えない未来に対するネガティブなものを受け入れながら、次に進むべきステップは「何かをすること」ではなくて「考える」ことです。考えることと行動すること、この順番が非常に大事になってきます。

 

弊社では考えるときのポイントとして、御社の商品サービスがどういうポジションなのかを俯瞰するための「4つの視点俯瞰法」をお伝えしています。横軸はお客さんの「購買動機」であり、縦軸が「作り手の動機」とし、4つのゾーンが出来上がります。簡単に言えば、御社商品がお客さんにとって「消耗品」なのかどうか。それとも、もう一歩進んでライフスタイルを豊かにする「生活品」なのか、といった視点で俯瞰してゆきます

 

「菓子パン」を例にとってみましょう。

社長ご自身の御宅では、おそらく白米だけでなくパンも召し上がっておられるでしょう。例えば食パンが置いてある横に「菓子パン」がいくつか買って置いてあると想像してください。コンビニエンスストアで買った「メロンパン」もあれば、奥様が銀座で買って来た「あんぱん」もあります。もしかすると、社長ご自身が大好きな地元銘店の「シベリア」がストックしてあるかもしれません。

 

メロンパンは塾に行く前、育ち盛りのお子さんが空腹を満たす為に買ってあるもので、お子さんにとっては「無くては困るもの」つまり消耗品に近いものかもしれません。一方、奥様が銀座で買ってくるあんぱんは「お八つには木村屋さんのじゃなくちゃダメなの」ということで、必需品ではないけれど、奥様のライフを豊かにしてくれるもの、それを「生活品」と定義します。銀座まで足を伸ばせない時には「成城石井のあんぱん」をお求めになっているかもしれません。消耗品や生活品は、生活者にとっては「替えがきく」ゾーンです。A社でもB社でもどっちでも良い、という心理的側面があります。

 

ところが社長の「シベリア」は別格です。近所の、小さい頃から通っていたサンモリッツ名花堂のシベリアじゃなくてはダメ。「あのカステラであの羊羹をサンドしていなくちゃダメなんだ」。ビジネスで辛いことがあっても、あのシベリアを食べて頑張ってこられた。色とりどりの華やかな菓子パンのなかで、地味に実直に生き抜いてきたシベリア。小さな町のパン屋さんが大事に大事に育ててきたシベリア、まさにシベリアは自分自身なんだ・・・。つまり、社長にとってシベリアは、ただの菓子パンではなくて「人生の一部」であり、替えのきかない商品です。わたくしどもはこうした商品を「人生品」とネーミングし、定義しています。

 

菓子パンを例にあげましたが、わたくしたち生活者にとって「菓子パン」と言っても、消耗品もあれば生活品、かけがえのない人生品もあり、ひとつの家庭にさまざまな菓子パンが混在しています。そして、選ばれる商品、選ばれ続ける商品サービスとは、間違いなくお客さんにとって「人生品」であるということです。

 

 

もう一度、菓子パンの世界に戻ります。社長にとって「シベリア」とはかけがえのない人生品です。もちろん美味しいことは当たり前です。その上で、小さな頃の思い出もあり、造っているサンモリッツ名花堂の店主との交流もあり、小さな町のパン屋への想い、店に静かに置かれている佇まいも含めて大切な商品で、シベリアを巡る「世界観」こそが社長の人生の一部になっているのです。

 

商品には「性格」があります。そして「人格」があります。それは、企業に「人格」があることを示唆しています。商品サービスには、わたしくたちが考えている以上に経営者の人格がにじみ出ます。それは作り手から離れて「生活者」に立ち戻れば当たり前のことで、わたくしたちも無意識に実感していることです。

 

生活者は商品サービスそのものだけで「選ぶ」わけではない。企業が伝えること、そして商品を売っている場、売っている人、商品を包んでいるもの、運んでくれる人、その商品に関わった時間、そのすべてが商品の世界観をつくっています。わたくしたち生活者は、商品を巡る包括的な営みを「選ぶ」のです。そして、デジタル化する今の時代、企業に商品サービスに求められているのが「人間性回帰」「人間性の回復」です。商品の性格を磨き上げ、「人格」を高めることが非常に重要です。

 

御社はどの方向へ進もうとしていますでしょうか。お客さんにとって、まずどういう存在でありたいか。時代がどんなに変化しても、そこを考えることが商品リニューアルのスタートとなります。データをはじめとした「情報」は、その後です。道具を上手に使うためには、まず「思考」が必要不可欠です。わたくしの商品リニューアルはテクニックやノウハウの研修ではなく、御社の中にある魅力や強みを「見つけ出す」、潜在力を「引き出す」という姿勢です。商品リニューアルには、御社に潜む負のスパイラルをリファイン(純化)する力があります。