リニューアルヒットを導く“着眼設定”の秘訣 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第121話

先日、福島県の白河まで出かけました。

東京駅から新幹線でゆく経路で、弊社ブレーンの1人であるA氏を同行していました。A氏は主婦であり暮らしのプロで生活者のプロフェッショナルです。常に消費者独特の嗅覚で話題になったりヒットしているものを見つけたり、発掘する天才です。

 

車内での軽食にはA氏のオススメで東京駅構内のエキュートにある「メルヘン」というサンドイッチ専門店へ。名前も赤いクマのロゴマークも昭和レトロ。今まで認知はしていて、なんとなく気になる店ではありましたが「サンドイッチ」に対するイメージがあまりよくなくて買い物をすることはありませんでした。

 

あらためて案内されると、壁面にあった場所から売り場の中央に移転し、店舗面積が拡大していました。そして平日の午前9時半頃でしたがすでに長蛇の列。可愛いお店ですのでターゲットは「女性」と考えそうなものですが、何と7割がスーツ姿の男性です。

 

冷蔵ケースには、惣菜系サンドからトレンドの厚焼き玉子、そして大ぶりにカットしたフルーツ系などバラエティ豊かです。価格帯はコンビニエンスストアの倍以上の高価格、400円代が中心です。前に並んでいた女性にあってはお土産として購入していました。オリジナル保冷バック(300円)に入れてもらい、右手に4袋、左手に4袋。総額10,000万円以上の買い物です。その後も、お客さんの列が続いていました。

 

心の中で「すごい人気だな、どうしてこんなに人気があるのかな・・・」と不思議で、食べるまでは理由がわかりませんでした。そして車中、一口いただいて驚きました。

 

洋菓子の世界でも、生のフルーツを扱う商品はとても難しいものです。鮮度管理、品質管理が問われます。サンドイッチの場合、生クリーム、パン生地という素材との組み合わせで、水分や油分があるものを、食感良く、美味しく、鮮度を保ちながら安全でなければなりません。また、美味しい商品を製造できたとしても、さらに配送での管理、店舗での品質管理などデリケートな難題が山積しています。

 

この会社は東京八王子で創業し約40 年続いています。経営者の原田純子氏は主婦から起業したそうです。パートアルバイトを含め従業員300名ほどで2018年の売上高が約21億円。何と、この会社は工場をもたない専門店なのです。すべて百貨店内の厨房で作っているそうです。コンセプトは「日本人が毎日食べても飽きないサンドイッチ」。原田社長の言葉では会社を拡大することよりも、「本物志向」にこだわって味を守ってきた、ということです。

 

そんなメルヘン社との出会いをここまでお伝えしてまいりましたが、ここまでの言葉で注目して欲しいポイントがあります。それは“なんとなく気になる店ではありましたが「サンドイッチ」に対するイメージがあまりよくなくて買い物をすることはありませんでした”と書いたところです。

 

わたくし個人は「サンドイッチは特別の日の食べ物」というスペシャル感があります。幼かった頃母が作ってくれたレタスがシャキッとしていてパンがふわふわのサンドイッチがいちばん好きです。大人になってパン屋さん、コンビニエンスストア、コンサートホールなどで食べるそれらはまったく別物です。食感が悪い、素材の味が良くない、クリームが脂っぽい、パン生地がボソボソ、パサパサしている。さらに、表示シールにたくさん書いてある添加物の多さにもうんざりしたものです。

 

こうしたサンドイッチに対する不平不満を解決しているのが、メルヘンのサンドイッチです。表示シールの原材料名を見れば他社商品との「違い」がわかります。原田社長の原点がどうだったかはわかりませんが、おそらく生活者のプロである主婦から起業した経営者ですから、生活者目線の「着眼」から生まれた会社だと想像しています。

 

翻って御社の商品サービスについて視点を移してみましょう。

増税前の今、10月以降の消費の冷え込みを思うと心配や不安が最大化する時です。波のようにやってくる「売れない時代、再び」といった予兆で、ご相談でも「不安です。どうしたらいいでしょうか」と暗く重い表情をされます。商品リニューアルに関心をもたれる経営者さまが増えているのですが、その商品リニューアルが「攻め」や「仕掛ける」ではなくて「守り」に入る傾向にあるのが気になるところです。

 

面談では今まさにもがいておられるご様子でこんな風におっしゃられます。「リニューアルなんですが、先生、実は値下げをしようと思っていますが、どうでしょうか」「プレゼントをつけてたくさんお客様を呼び込もうと考えているのですが。。。」と。

 

「売れない時代」でも売れる商品サービスがあります。値下げや物をあげる、ということに走るのは逃げです。増税前の今だからこそ、よそ見をしないでまっすぐ自社商品サービスに向き合ことをしなくてはなりません。そして、その時に忘れてはならないポイントがあります。それは自社商品サービスとの「向き合い方」です。今までのやり方では飛躍できない、ということはお分かりだと思います。

 

そこで、弊社の商品リニューアルでは “着眼設定法”をお伝えしています。この着眼設定法には2つのやり方があります。「物的回転法」と「心的回転法」です。簡単にお伝えすれば、前者は商品サービスを360度のあらゆる角度からの視点で視ることです。缶ビールであれば実際にパッケージを手にとって360度さまざまな角度から見つめ、味わい研究することです。他社商品も同じように360度さまざまな角度から見つめます。

 

心的回転とは脳科学の専門用語です。実際のものを動かさずに頭の中で物体が回転したイメージを描くことです。商品リニューアルにおいては頭のなかで、第三者が自社の商品サービスを見つめたり使っていたりするイメージを描くことです。単純化してお伝えすれば、心的回転法とは「お客様の心になって360度さまざまな角度から見つめる」ということです。すなわち商品研究ではなく「お客様の心の研究」です。わたくしの生肌感覚では、商品プロデュースにかかわっての四半世紀に出会った「売れない商品」の9割が、お客様の研究ができていません。売れない会社は、お客様の心に向き合っていません。自社に、自社商品サービスばかりに向き合っています。

 

増税前の空気感の中、自社の商品サービスを視るときに、商品そのものの「物的回転」か、自分から離れてくるりとお客様視点に移す「心的回転法」なのか?今一度何となくでやってきたことを点検してください。この“着眼設定”を仕組みとして取り入れることが、近い将来再びやってくる「売れない時代にリニューアルヒットを飛ばす」一歩です。よそ見をしている時間がありません。ぜひ今からスタートしてください。