ヒットが生まれる「読解力」の鍛え方 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第127話

メーカーに勤務していた時代、ふたつの会社で商品プロデュースに関わっていました。1社目では「年賀状」。もう1社では「洋菓子」です。どちらの商品も、商売の基盤となる「土台」があります。年賀状であれば土台とは「ハガキ」です。洋菓子であれば「生地」です。それを「季節」や「イベント」によって上手にリニューアルし、お客さまにくり返し使っていただく、買っていただく、という事業モデルです。

 

年賀状はそもそもが一枚の「ハガキ」。そこに「謹賀新年」などの賀詞文字、干支の絵柄デザインを印刷することで「年賀状」になります。「季節」で考えてゆくと、真っ白な紙が「暑中見舞い」や「残暑見舞い」になります。これを「イベント」で考えれば、結婚すれば「招待状」になります。どなたかが亡くなくなった時には「喪中ハガキ」とリニューアルします。

 

洋菓子は粉と卵で作った生地が土台です。季節やイベントに合わせてクリームやフルーツで飾り、そうした商品コンセプトに合わせたパッケージに包み、お客様にまず買っていただく。使って、食べて良かったと喜んでもらって、ファンになっていただくという商売です。

 

商売の「土台」は非常にシンプルです。御社が日本酒や味噌製造であれば「発酵」を土台にした商品サービスの会社です。和菓子であれば「小豆」と「粉」なのかもしれません。その土台から、ヒット商品がうまれ、同じようにヒット不発の商品が生まれます。土台はみな似たり寄ったりであるのに、大きく飛躍する商品とそうではない商品が生まれるのはなぜか。

 

前職では、どちらの現場でも最も重要視していたのが「現場の声」=生声(ナマゴエ)です。それは、顧客の声を聞いて言われた通りにリニューアルする、といった短絡的行動を指しているのではありません。生声から「消費者が潜在的に持っている欲求」を読解し、行動化する仕組みづくりを指しています。

 

年賀状メーカーでは「絵柄」に関する消費者モニター調査を自社主導で創業時から行なって仕組み化していました。洋菓子メーカーでは今から20年前の創業50年当時、アナログツールのひとつである「日報」を取り入れていました。全国300店舗以上の店長から毎日本部へ日報がファックスされてきました。

 

その日報には「現場の情報は会社の血液である」といった言葉が印刷されていました。店長が報告してくるのは、その日の売上など数字。そしてフリースペースには、その日の出来事や本部への依頼、お客様からのお叱り、商品への苦情、売れ筋、競合他社店舗での動向、お客様から教えてもらった他社商品の話など、なまなましい言葉が綴られています。多くが「お客さんがこの商品を〇〇と言っている。改善してほしい」といった苦情の記録です。

 

ではどう生かすか。商品リニューアルではヒットに導く3つのステップを定義しています。1番目が「見極め」です。たくさんの提案商品の中で売れるか売れないかを見極められることです。そして、次は「改善ポイントの特定」です。どこがヒットに近づけないのか、伸び悩んでいるのは「どこか」、「どこが」お客様に嫌われてしまうか。そして、第3段階は「直し方の具体策」。こう直せばよくなるというやり方を具体的に呈示できる力です。そして、この第一段階の「見極め」がまちがってしまうと、すべてのボタンが掛け違いとなります。全てがズレてヒットしません。

 

一番大事な第一段階「見極め」をするための分析ツールのひとつが「消費者モニター調査」や「日報」を使って現場での生声を吸い上げです。イマドキであればこれらはデジタル化され社内で即座にシェアされているはずです。消費者モニターにしても日報にしても、経営者に求められるのは「読解力」です。日報を読み、現場での出来事の奥を読み、着眼点を発見し、実際の商品リニューアルにつなげていく。こうした商品リニューアルの仕組みを社内に構築して、日々を回してゆくことで、時代が変わってもブレないヒットの原理原則ができあがります。

 

こうした取り組みは昔からあるシンプルな手法で、わたくしのコラムを読むまでもなく「何を今さら」といった印象でしょうか。しかし、ヒット商品を出したい出したいとおっしゃるトップに限って「現場の声」を聞きたがりません。仕組みを作っていても軽視しています。つまり「見ている」けれど「読み取っていない」のです。

 

ヒットには極意があります。現場のお客さまがそのヒットの原石を持っています。お客さまが訴える苦情や失敗にヒントがあります。買いに来ないという無言の反応にヒントがあります。他社の成功にもヒントがあります。灰とダイアモンドを自社で見極められるようになるために、事実をもとにした自社の「記録」をしっかりと仕組み化し読解力を養うことです。

 

今まで生き残ってきた企業は日本が人口増を背景にした幸運な時代のビジネスモデルです。そして今の時代は人口が減っています。今までやってきたやり方でビジネスを回していれば、自然の法則から考えてみても、市場はバランスをとって秩序へと向かうので、企業は淘汰されてゆきます。黙って先送りしてしまうその「時間」こそが一番のリスクの時代です。

 

自社に欠落しているものはなにか。そこを読解できた時、ヒットに近づきます。商品リニューアルは、変化戦略ですので時代の変化に強い打ち手です。御社独自の「ヒットの極意」を仕組み化することができます。変化し続けるお客さまの心の半歩先に仕掛けてゆく仕組みを作ってゆくことができます。企業淘汰が進む厳しい時代、時間という資源を有効に活用し、自社リソースを見極めて大きく飛躍してゆきましょう!