商品リニューアルに毒を盛れ。 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第157話

連日報道されている通り、新型ウィルスの影響で東京も訪日のお客様が減り、人気スポットや街が伽藍としています。生活圏を歩いているだけでも、さまざまなビジネスにおいて、計り知れない影響が出ていることがわかります。

 

そもそも人口問題が深刻な今の日本において、「人口が少ないから商売が成り立たない」、「日本は少子化だから先がない」という声があちこちで叫ばれています。しかし、ひと呼吸おいて見渡してみれば、訪日のお客様が減ってしまった環境にあっても、近所では行列のできるラーメン店やパン屋さんがあります。日本全国を俯瞰すれば、それぞれの地に困難を超えて成長しつづけている企業があります。

 

創業400年の老舗・和菓子の虎屋では、「あん」という強みを武器に商品リニューアルをし、ジャムのように普段づかいができる「あんペースト」を発売し、カフェや工房をつくるなど、新しいお客様層を拡げ、進化し続けています。

 

少子化で文房具が売れない、という話は山ほどありますが、今現在「手書き」ブームが続いています。手帳やノートなどの文具が人気です。筆記具メーカーのパイロットでは、強みである「ペン先」の価値はそのままに、万年筆のボディーをカジュアルに商品リニューアル。書き味の良い、1000円ほどのかわいい万年筆「kakuno」が大ヒットしました。

 

「商品を磨く」ことや、「商品力を高める」ことは、トップであれば当たり前のことでしょう。しかし、ビジネスの現場では苦労して開発した商品でさえ、発売してしまったら無意識に「終了」の幕を引いてしまわれます。一方、時代を超えて生き残ってきた企業を支えているのが、強靭な「商品力」です。そのことを肌身にしみて痛感しているトップは、ひたすらに淡々と「商品力」を磨き上げています

 

わたくしどものコンサルティングでは、商品力アップの善循環を構築することで、ご商売が成長し続ける仕組みづくりをご指導しています。そのままでは売れない、売れなくなった既存商品を売れるようにするのが、わたくしどもが提唱する商品リニューアル戦略です。

 

御社が洋菓子メーカーだとして、例えば主力商品を「プリン」としましょう。基本原材料は「卵」と「砂糖」と「カラメルソース」です。製法には、「焼きプリン」「蒸しプリン」「冷やして固める」などがあります。パッケージには「ガラス容器」「プラスティック容器」等があります。食べ方には「お皿に出す」「そのまま」、タピオカのように「飲む」、羊羹のように「カットする」、「凍らせる」などのさまざまな提供方法があります。ネーミングもプディング、ぷりん、卵菓子等々いろいろでしょう。

 

「プリン」という商品をぐるり分解するだけで、これらの要素で成り立っています。一般的な商品リニューアルの教科書には、これら要素のリニューアルが事例として出てくるでしょう。が、わたくしどもの商品リニューアルのポイントは、そこではありません。商品リニューアルの旨味は、御社のプリンが「プリン」を超えた先にあります。いまやネット通販のアマゾンで、簡単にラクに世界中の魅力的なプリンが手に入る時代、既存の価値を超えることが商品リニューアルの本意です。

 

例えば、アートの世界において、作家は “作品に魂を込める”“命を吹き込む”といった表現を使います。わたくしどもがご支援した酒造の経営者は、自分たちが造った日本酒を「作品」と表現していました。その蔵では、毎年大切に育てられた日本の酒米を使って酒造りをします。若い頃から腕を磨いてきたベテランの杜氏と、若き蔵人がともに仕込みます。生命線である水は敷地内の井戸よりひいて、その井戸脇には龍神を祀っています。社長自らが朝夕毎日手を合わせます。商品ラベルは地縁のある和紙を使い、和紙を漉いた人間国宝が商品名を揮毫しています…。

 

ひとつの商品がこの世に生まれるまでに、どれだけの人が、どれだけの人生が関わっているのでしょうか。モノであふれる今、商品品質が良いのは当たり前の時代です。プリンであれば卵の深いコクがあってしかるべきですし、日本酒であればその芳醇な香りが命です。そうした誰もが心の中にある「期待」を超えて、その商品サービスがこの世に存在する意味、価値を提示することが、真の「商品力」であり、商品リニューアルです。

 

御社には、売れなくなった主力商品が眠っていませんでしょうか? 目の前の主力商品は宝の山です。ネーミングを変えるだけ、もちろんヒットの可能性があります。パッケージデザインを女性向けに変えることなども、良いアイデアかもしれません。そして、もう一歩踏み込むことです。商品に「魂」を込めましょう。毒々しいほどの想いを込めましょう。これこそが、モノあまり時代の商品リニューアルです。魂という「毒」を込めることが、そのあとに続くプロモーション、コミュニケーション、PRといった、仕組みの起点になってゆくのです。