「ない商品」の作り方 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第168話

一冊の小さな本があります。日経ビジネス文庫から出ている「30の発明から読む日本史」という本です。理学博士の池内了(さとる)さんが書いています。30の発明を二つの視点で見ており、ひとつが「伝統的未来技術」、もう一つが「近代科学の盲点技術」としています。伝統的未来技術とは、発酵をはじめとした、長い伝統のなかで培われた今後も長く生き残ると思われる文物。後者は、日本独特の発明品でカラオケやインスタントラーメンです。

池内さんが紹介する「30の発明」とは、

・縄文土器

・漆器

・納豆

・日本酒

・城

・かな文字

・畳

・和紙

・着物

・扇

・日本刀

・醤油

・忍者

・茶道

・歌舞伎

・浮世絵

・握り寿司

・ソメイヨシノ

・俳句

・乾電池

・養殖真珠

・八木アンテナ

・胃カメラ

・インスタントラーメン

・新幹線

・クオーツ時計

・光ファイバー

・自動改札機

・カラオケ

・青色発光ダイオード

 

この50の発明が、そのままの形でいまも商品サービスとして生きているものと、そうでないものがあります。キーワードは「ライフスタイル」の変化です。人の「暮らし方」が変わる時に、姿を消す商品サービスが出てきたり、リニューアルされ思いもよらなかったカタチに変わる商品やサービスが出てきます。

 

姿を消した発明のひとつに「忍者」があります。史料で忍者の存在が確認できるのは南北朝時代以降。今から630年ほど前です。もともとは「スパイ」として確かに存在していました。しかし、戦乱が終わり江戸時代になると、仕事にありつけない忍者が出てきます。夜陰にまぎれて情報収拾をするスパイという役割が求められなくなりました。現代においても需要ゼロです。

 

一方、「Ninja」は今や世界の共通言語であり、ドラマや小説、アニメーションやゲームといったファンタジーの中で大活躍です。外国人観光客の中には、「忍者体験」が人気を博しています。職務としての「忍者」は消えてしまいましたが「キャラクター」としてリニューアルし、ロングライフ商品としてこれからも進化してゆくでしょう。

 

忍者がキャラクターとして、「Ninja」という新しい名前を得たように、時代が変わり、暮らしが変わり、商品サービスがリニューアルし、新たな商品サービスに生まれ変わる。この流れはシンプルな真理であり、歴史が証明しています。

 

わたくしたち経営者は、いまはまだ「ない」商品やサービスを発明する転換点に立たされています。時代の変化に合わせて、ではなくて「新しい時代をつくる」ものたちです。商品リニューアルという智慧と工夫で、独創性を発揮する時です。これからの企業活動に結びつけて豊かに収益を上げる仕組みづくりをする時です。

 

ちょうど1週間前の今日、日本電信会長兼CEOの永守重信氏が日本経済新聞で、「50年、自分の手法がすべて正しいと思って経営してきた。だが今回、それは間違っていた。」、反省する時間をもらっていると明言されました。 (4月21日日本経済新聞「コロナと世界」)

 

重い言葉です。ガラリと世界が変わったということです。生活者は基本的には保守的です。変わる変わると口で言っていても、昔のままが好きです。今までのやり方に安心します。これは、マーケティングにおけるイノベーター理論でも証明されています。しかし、経営者が同じ視点ではいけません。歴史という絵巻物を見つめるように大局から見据え、その上で「わたしたちが、新しい時代を創ってゆくんだ!」という気概が求められています。

 

ハーバード大学によれば、2022年まで現状のような「巣ごもり」の状況は続くであろう、と示唆されています。歴史も疫病蔓延の第二波、第三波があることを伝えています。古典文学では、疫病後の社会の荒廃を伝えています。しかし、災害、疫病や戦争を繰り返してきた歴史の中で、連綿と人類が続いてきたことは事実です。ダメになってしまう人間もいれば、苦境をバネに成長する人もいま。すべての人が、すべての企業が「悪い方」へと向かっていくわけじゃないこともまた事実です。

 

マスコミもまた商売です。「ショック」を与えることで、興味関心から購買までのステップを登ってもらうためのゲームをしかけています。マス媒体だけでなく、ソーシャルネットワーク上のニュースソースもまた同じです。ご自身の心を清らかに、そして高らかにお持ちになって、衝撃や不安を掻き立てる「びっくりゲーム」をリセットしましょう。

 

不安、不満、葛藤、苛立ち、悲しみ、そんなネガティブで大切な人たちが気力をなくしています。どんな時であっても、人はいい商品やサービスを求めています。心を明るくしてくれる商品サービスを求めています。

 

ゼロから構築するのではなくて、先人たちがそうであったように、智慧と工夫のリニューアルです。いままでの哲学、いままでの実務が土台になることは間違いありません。自社の中に眠る独創性を発揮する時です。それらの商品に、名はまだ「ない」のです。今はまだ「ない」商品で、お客様の喜びを増やしてゆく未来へ。千里の道も一歩から。進みましょう!