事業のパラダイムシフトを起こす「核」の作り方 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第180話

時代が大きく変化している今、有形・無形の既存商品をリニューアルすることで、ビジネスが飛躍するチャンスのときです。しかし、まだまだ従来のマーケティングフレームのままで商品を作ろうとしている会社がほとんどです。

 

商品リニューアル戦略において、おさえるべきポイントがあります。それは、自社ビジネスの「核」となる考え方が構築できているかどうかです。例えば前職の洋菓子メーカーには、「わたしたちは洋菓子の百貨店になる」という創業者の考え方がありました。ひとつのお店で、すべての洋菓子が揃う、という考え方です。

 

アイスクリーム、洋生菓子、焼菓子、チョコレート商品などバラエティに富んだラインナップ展開を基盤とし、店づくり、人員配置などすべてこのコンセプトに合わせてゆきます。こうした考え方があることで、年間、月間の商品戦略の方向性が定まってゆきます。商品構成の考え方も「洋菓子の百貨店」というコンセプトを基盤にすれば、バランスを重視したラインナップを検討することとなります。

 

一般的には「商品リニューアル」を小手先のテクニックと思い込まれ、このような考え方の基盤がなく、自己流で取り組んでしまう会社が多く、その結果、商品構成がぐしゃぐしゃになったり、社内が混乱してモチベーションが落ち、販売に力が入らないなど、大火傷するケースがとても多いものです。

 

そうならないためにも、自社の「核」である考え方を再確認しましょう。自社の核とは、お客様にとって「自社がこの世に存在する意味」です。

 

前出の洋菓子メーカーのコンセプトである「洋菓子の百貨店」には、品揃えはもちろんですが、それ以上に、創業者の夢とロマンがつまっています。敗戦直後の焼け野原だった銀座で創業。デパートのようにワクワクさせ、気持ちを高揚させる洋菓子店にしたい。なんでも揃っている喜びを届けたい。自分たちはお菓子のデパートになって、お客様に喜びを届けよう! 事あるごとに社員に語って聞かせていました。

 

今の時代であれば、ワクワクしたり気持ちを高揚させる場所は、必ずしも「百貨店」ではないかもしれません。しかし、スイーツを買うときの高揚感は、不安な時代であれば、ますますお客様から求められるものです。重要なのは、「百貨店」という言葉そのものではなく、その言葉に込められた意味、「スピリット」の部分をしっかりと明文化し、コミットすることが大切です。

 

7月21日付の日本経済新聞朝刊「社長100人アンケート」によれば、コロナ長期化に危機感、事業環境がコロナ前水準に回復するまで「2年以上かかる」と回答した経営者が55.8%と報じています。

 

一方、34面の社会面では「夫:面倒見たと自負、妻:夫・子にイライラ」と外出自粛による夫婦で育児に意識差が生まれているという調査報告が掲載され、隣の記事では「SNS乗っ取り」の問題が取り上げられています。生活者にとって、巣ごもり生活でイライラすることが多かったり、リアルからネットに活動の場が移った今、SNSなどの事件が生じたり、不安や不満が生じていることがわかります。

 

また、若手俳優の自死がニュースになっていますが、面識のない人物であっても、身内のそれと同じように気持ちが塞いだりすることがあるそうで、ネット上には若者を中心に「気持ちが落ち込む」という投稿が目立っています。経営者のマインドも、生活者マインドも不安感と、ストレスを抱えていることが読み取れます。

 

“雨がふれば 人はなにげなく 傘をひらく。この自然な心の働きに その素直さに 私たちは日ごろ あまり気づいていない”。こう書いたのは、経営の神様・松下幸之助氏です。生活環境も、仕事環境も、さまざまな変化が突然雨のごとく天から降ってきた今、わたしたちにとって「傘」が必要になっています。変化による今であれば、不満、不安、イライラから自分を守る傘です。

 

今の時代に断続的に降り続く目に見えない「雨」は何か。そこをしっかりと考えた上で、自社の商品サービスをリニューアルしましょう。自社の「核」を考えていない会社は「自社の存在意義について、自分で語ることができない」という盲点が生まれます。自社商品サービスについて語れない会社は、あたらしい時代に自社紹介ができない会社になってしまいます。しっかりと「核」となる考え方を構築し、新しい時代にふさわしい「言葉」を語り、伝える力が求められています。