鬼商品で生涯ファンになってもらう方法 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第181話

人の心を動かす姿勢、それは「一生懸命」です。一生懸命さとは、N=1たったひとりの、あのお客さんを具体的にイメージして本気になる、という皮膚感覚です。

 

モノが売れない時代がずっと続いていました。コロナ禍であろうとなかろうと、マーケットは成熟しそこそこに良いモノや良いコンテンツでいっぱい、人の願望や欲求は満たされている時代がこれまで続いてきました。日本は高齢化が進み、本来購買意欲が高い若い世代には節約志向が進んでいました。そこに追い打ちをかけたコロナ禍、節約志向に拍車がかかり企業の淘汰が加速しています。

 

一方、生活者の間では新たな「気持ち」が胎動しています。「伸びること」や「続けること」が「勝ち」と定義するならば、マンモス企業を除いては、いったんは「負け」を受け入れざるを得ないのではないでしょうか。だれもがこの疫病の前では勝ちにいけないことを経験しています。

 

今は勝ち方さえわからない、素手で闘っているような時代、縮んだ人の心を動かすのは、挫折、苦境、不遇のようなネガティブな境遇から、もがきながらも崖を這い上がろうとする必死さ、一生懸命さ、がんばる人の姿です。格好が悪かろうが自分に負けないように闘っている人の姿。そんな一生懸命な人の姿を求めています。

 

わたくし自身を俯瞰してみれば、商品リニューアルの専門コンサルタントとしての使命は「応援」だと考えております。崖を這う中小企業の経営者を、クライアント企業を、企業が産み育てる商品サービスを全身全霊で応援し、次の事業ステージにお連れすることです。自分自身が「誰かや何かを一生懸命に応援する」ことと一体化しています。

 

最近、あるミュージシャンの方に手紙を書きました。たまたまある音楽番組を観ていたとき、50歳をゆうに過ぎた初老のミュージシャンが身体を縮めたり伸ばしたりしながら、自身の全てのエネルギーをふりしぼって、渾身で叫ぶように歌っていました。とにかく泥臭く、一生懸命に歌っていました。

 

コロナ禍、そのミュージシャンもまたツアーができなくなっていました。無観客のスタジオで、カメラに向かって一生懸命に汗だくになって「がんばろうぜ」と歌っているのです。こみあげてくるものがありました。エールを一生懸命に送ろうとしている姿に、ただただ鳥肌が立ちました。

 

年齢やキャリアが近く、わたくし自身の境遇とどこか重なっていました。告白すれば、わたくし自身、いくつかの仕事が残念なカタチでキャンセルになることが続いていました。気持ちが折れていたときその人のパフォーマンスが刺さりました。応援魂がふるえファンレターを送りました。

 

そして、最近新曲がリリースされました。その新曲が、どう聴いてみても、わたしが出したファンレターへの「アンサーソング」にしか聴こえないのです。誇大妄想上等、わたくしはそう感じたのです。その瞬間に「このミュージシャンを生涯ずっと応援し続けよう」、天啓のような瞬間でした。

 

優れたクリエーターとはN=1の考え方で創作するものです。たったひとりに向けて音楽をつくり、演奏しているのです。その結果、向こう側にいるお客さんはだれもが、「これは私に向けて書かれている」「私に向けて歌ってくれている」と感じるのです。その瞬間に自分ごとになるのです。

 

お客さんが「自分ごと」として受け入れた時、その商品サービスに興味を持ったり、買ったりします。「自分ごと化」できた時、お客さんの人生と商品サービスがつながり、一体化します。そして、“わたしだけのもの”となり、唯一無二の価値となり、プライスレスの商品サービスとなるのです。「企業」と「商品サービス」と「お客様」が一体化するということを、当事者として改めて学び直しました。

 

たったひとりのお客さんに向かってつくる。一生懸命につくる。そんなことは当たり前だという声が聞こえてきます。しかしどうでしょうか。ほんとうに御社の目の前のお客様の息吹を感じるほどにイメージして、商品サービスをつくっているでしょうか。

 

そして、泥臭いまでのやり方で、一生懸命にお客様にメッセージを伝えているでしょうか。メッセージを伝え続けているでしょうか。そして、お客様からの返信を受け取る「受け皿」を用意してますでしょうか。それを放置していないでしょうか。

 

自社にご自身に火をつけ、情熱の火をたぎらせてください。自社都合の「一生懸命」は見透かされます。今を生きるお客さんのために、たった1人のあの〇〇さんを喜ばせたい。その熱くなるほどの本気が、泥臭いまでの一生懸命がヒット商品を生み出すための起点となります。

 

この感覚を肌で理解できないというのであれば、お客さまに喜んでいただける、買っていただける商品サービスをつくることはできません。コロナ禍にお客様の心を動かす商品リニューアルを成し遂げることはできません。

 

厳しいようですが、いち消費者、いち生活者としてやり直しです。商品サービスを通して心を奮わせること、ゾクッとした瞬間のあの鳥肌の感覚をつかむために。コロナ禍、わたくしたち経営者の武器はノウハウやテクニックではありません。本物の商品に触れた時、本物のサービスを知った時、身体に走るゾクゾクッとした独特なあの「鳥肌感」なのです。