変えただけでは刺さらない「言葉」の法則 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第185話

先日、ある三代目社長と打ち合わせする機会がありました。創業者は戦後の好景気を背景に躍進、二代目はバブル崩壊で迷走しました。そして三代目で奇跡のV字回復。リーマンショック、東日本大震災、少子高齢化等で右肩下がりの時代に受け継いだ三代目社長は40代半ばの経営者で、このコロナ禍もやわらかく思考をリニューアルし、さらに躍進の勢いです。

 

平成そして令和、厳しい経営環境にあって、ついつい外部環境のせいにしたくなるのが人情です。この三代目は違いました。なぜ、商売を強くできたのでしょうか?  シンプルに言えば「いい言葉をつかっている」ということです。社長が自分の言葉を持っている、自分の言葉で伝えたいことを伝えることができる。これが三代目のとてつもない強みとなっています。

 

自社のことや商品サービスのことを伝えることは、案外むずかしいものです。ましてや、見ず知らずの人に伝えることは尚更です。ビジネスにおいては、お客様や社員の心を動かし、行動してもらいたいのですから難易度が上がってきます。

 

それゆえに、商品サービスにおいてはコピーライター、講演においてはスピーチライターといった言葉の専門家がいます。が、中小企業ではこうした言葉の専門家を活かす発想がありませんし、存在すら知られていないものです。

 

ゆえに経営者が自分で考えるか、誰かがつくった言葉などを組み合わせながら、四苦八苦して自分たちの商品サービスを表現し、ご自身の考え方を伝えているのが現実ではないでしょうか。わたしたちにとって「話せて書けて当たり前」。言葉は当たり前すぎる存在、ゆえにどこかで言葉を軽視しています。

 

冒頭の社長は「ことば」が秘めている力をよく知っています。自分が発する言葉を自身の分身として、使者としてさまざまな媒体で活用しています。

 

言葉を大事にし、会社のロゴマークやカラー、名刺に書かれている会社のタグライン、WEBサイト等々、言葉を上手に組み立てています。さらに、先代の時代には導入できなかったデジタルツールを活用し、自分の言葉で商品サービスをわかりやすく伝えています。

 

アナログだったビジネス環境をリニューアルし、ITを導入することで、法人や個人のお客様とのコミュニケーションをより強固しました。社内環境の構築も強化しています。またコロナ禍でリモートの時代となり、日本中どこでも、世界中どこでも商売ができるようになり、ますます飛躍の時と睨んでいます。

 

商品サービスの源泉とは何か。例えば、ある社長はそれを「思い」と表現するでしょう。また、あるトップは「ニーズ」と言い換えるかもしれません。源泉がなんであれ、“言葉”にしなければ、それは頭の中でうまれた妄想。言葉にした時はじめて、第三者と共有できる「概念=意味、コンセプト」となるのです。経営者のことばの持ち方、使い方でビジネスが飛躍的に変わります。

 

こうした話をお伝えすると「経営理念から商品コンセプト、会社のタグラインをリニューアルしました! 」と連絡をくださる社長がいます。本質はその言葉が「自分の言葉」になるほど考えているか、ということです。ですから、より強い言葉をつかってタグラインや商品コピー、ネーミングをリニューアルしたとしても、何一つ変わりません。むしろ部分的な改変によって、印象が支離滅裂になってしまい、前よりも悪くなってしまうことの方が多いのです。

 

冒頭の三代目社長は、ある言葉について話をしている時、「取り憑かれているのではないかと思うほどその言葉が好きだ」と説明してくれました。それぐらい、ひとつひとつの言葉について真剣に考えていると話すのです。

 

世界中のマーケットが縮小せざるを得ない今、生活者も守りに入っています。一方、ドイツではベーシックインカム=最低限所得保障の実証実験がスタートする動きがあります。「商品サービスを買う」ことの意味が変わろうとしています。

 

生活者はあなたの言葉を欲しています。借り物ではない独自の言葉を欲する時代です。商品サービス、それを提供する会社、その会社のトップの言葉に対して「あ、この人ほんとにそう思っているのだな」とか「本気で、ほんとうのことを言っているんだな」という誠実さ、その人しか表現することができない言葉に、唯一無二性を感じるのです。果たしてその商品サービスのファンになり、その会社のファンになり、生涯応援してくれる、そんな当たり前の流れが今の時代の空気感です。

 

商品サービスのリニューアルとは、“あたらしいファンづくり”に他なりません。社長独自の、借り物ではない言葉で、自社のことや商品サービスを表現できるようになった時、お客さまにはじめて届きます。伝えたいことがある、と心が叫ぶまで考えることが必要不可欠です。わたくしどものコンサルティングでは、この深い根の部分から構築し、しっかりとした基盤づくりを大切にしています。

 

あなたには、伝えたい何かがありますか? 自社商品サービスについて、会社について、取り憑かれるほど考えることがありますか?