伝えたくてウズウズする「世界観」のつくり方 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第197話

世界観をリニューアルする。今日お伝えしたいのは、弊社商品リニューアル手法においてのキモである「世界観を変える」という考え方です。考え方があって、「やり方」があります。まずは「今後商品サービスをどうしたらいいのか」と悩んでおられる社長のために、その根幹をなす考え方をお伝えします。

 

さて、本題に入る前に60秒だけ時間をください。ゆっくりと、読み進めながら、心の中で想像してみてください。いま、あなたの目の前に、ふたつの色つきメガネがあります。ひとつはレンズが灰色です。もうひとつのメガネは、桜色です。

 

まずは、灰色のメガネをかけてみます。白いものが灰色になりました。目の前の風景が暗いトーンになりました。こんどは、それを外して、桜色のメガネをかけてみます。風景が変わりました。一転して、明るくなりました。さっきまでの灰色の世界が、春めいています。

 

色メガネは「たとえ」です。広辞苑で意味を引けば、「先入見(せんにゅうけん)や感情に支配された見方」と説明しています。例えば、「色メガネ」とは、テレビや新聞、ネットニュースなどのマスメディアの見方です。また、SNSで流れるパーソナルメディアの見方でもあります。そのほかに、世間の見方、街の見方、そして家族や先生、友達の見方でもあります。わたしたちの世界には、たくさんの色メガネであふれています。

 

コロナ禍になって、灰色メガネと桜色メガネのどちらが増えたでしょうか? 世界が灰色に見えるメガネと、桜色に見えるメガネ。おおきく二つに分けたとして、あなたは、どちらの色メガネをかけることが多かったでしょうか? もう少し踏み込んで本音でお聞きします灰か桜か、社長はどちらの色を、自ら積極的に選んできましたか?

 

世界は「不安」と「不満」と「人間の陰謀」に満ちている灰色の世界。それとも、世界は「発見」と「喜び」と「自然の摂理」に満ちている桜色か。案外わたしたちは、無意識に「色=物の見方」を選んでいます。

 

大きな時代の傾向としては、現役世代の自死が増加している今、灰色メガネの影響が強いと仮説がたちます。そして、わたしたちは、商品サービスを世に送りだすものとして、まず一度、色メガネをはずすことが求められています。そうした上で、素直に周辺を社会を、そして世界を見ることです。

 

「情報が多すぎて、何が正しいのかわからない」。新型コロナウィルス対策ひとつとっても、素人にとっては「何が正しいのか」、「どの専門家が正解なのか」が、わかりにくいです。マーケティングの国、アメリカでさえ大統領選挙は迷走しています。何が、誰が、正しいのか、その判断材料となるものさえ、真偽はどうなのか不安です。メディアの数だけ、色メガネが生まれ、さまざまなバイアスがかかっています。

 

色メガネをはずし、「素」に一度戻ること。「素直」は、「素」に「直す」と書きます。素直とは、曲がりがないことを意味します。SNSを含めて、溢れんばかりの情報の砂山に、丸腰の状態で置かれています。生活者はこの色メガネに気づき始めています。

 

生活者が今見ているのは、SNSやテレビの「情報」ではありません。情報ではなく、その伝え手である「人」を見ています。好ましいと思う人との接点や接触を求めています。心と心の接触を求めています。五感で感じようとしています。ゆえに「生声」「口コミ」「口伝」「紹介」を信頼しています。「あなただから、ぜひ買いたい、買ってあげたい」と、商品サービスを直感的に買います。「だれが何を言っているか」を重視しています。「素直」に目覚めた生活者が求めているのは、情報ではなくて「情緒」です。

 

企業はいま、世界観を持つことが求められています。人が作り、人が伝え、人と人とがつながる商品サービスの世界観を表現することが求められています。デジタル時代でありながら、商品サービス、そして企業に「ハート」を求めています。人肌感を強烈に求めています。尖った商品コンセプトよりもむしろ、心や気持ち=情緒を求めています。

 

生活者は、「あの人がいいと言っているから信じる。あの人の世界が好きだから応援する。あの人が素敵だから仲間になりたい」、そんな自分の感情を拠り所に、新たな喜び、新たな満足を体験しはじめています。世界観とは、商品サービスの世界を描くことではなく、人の世界を描くこと。ここを間違ってはなりません。

 

自社商品サービスの「コンセプト」が、以前のままになってはいないでしょうか? 新しい時代の空気感に合わせて、古いコンセプトをリニューアルする時です。灰色メガネをかけていたのであれば、桜色メガネに着替えてみましょう。桜色を愛用していたなら、灰色メガネをかけてみることで、新しい課題を見つけることができるでしょう。色メガネに気づき、そして色メガネで遊ぶ余裕が生まれた時、いよいよ「世界観づくり」となります。自社商品サービスが息を吹き返す準備が調っています。