非常時を生き抜く“商品リニューアル”実践法 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第82話

9月に入って数日、丸の内、渋谷、新宿、日比谷、表参道界隈を歩いていて、「黒」の服を着ている女性が多い、と違和感を覚えました。なぜなら「黒」は今季のトレンドカラーではないからです。一般的にはあまり知られていませんが、その年の「トレンドカラー」はあらかじめ決まっています。

 

一方、そうしたトレンドとは別に「流行」「ブーム」の傾向を汲み取るツールとして「街角景気」や「ジンクス」があります。ジンクス“JINX”とは、良い悪いどちらにせよ、縁起をかつぐ対象となるものの意味。経済活動の主体はわたくしたち人間です。生身の人間が行う経済活動はさまざまな影響を受けています。影響に対する人間の摩訶不思議な反応が、街角景気やジンクスとなって現れます。

 

 

例えばスポーツ大会で獲得した金メダルの数や、芸能人の結婚などおめでたいニュースが景気に影響していると言われています。自然現象では「ツバメが低空飛行していると雨」といったものから「カマキリの巣が高いと大雪、低いと小雪」「こぶしの花が枝いっぱいに咲く年は豊作」「南天の実がたくさん着くと大雪」等々、昔から言われて伝えられているジンクスがあります。流行色では「黄色やオレンジなどの明るい色が流行る時は景気拡張」。逆に「グレー・白・黒というモノトーンが流行している時は景気後退期」と言われています。

 

 

街で感じた「黒」。米国パントン社が今年2月に発表した2018年秋冬トレンドカラー全17色の中に「黒」はありません。つまり今年のトレンドカラーではない「黒」を、狭い範囲ではありますが多く目にし、ザワザワッとした違和感が生まれました。こうした直感は、経済統計データとは真逆の直感であり科学的な説得性はありません。

 

 

この違和感をどう視ますでしょうか

 

ふたつの潜在的心理、気分を感じとりました。ひとつはモノトーンは「景気後退期のサイン」というジンクスです。今夏は「殺人的に暑い夏」でした。内閣府のデータによれば、1994年と2010年の記録的猛暑の後は経済成長率も家計消費も「マイナス成長」になるというジンクスがあります。

 

伏線として、つい最近までネット通販で欠品していたのが、ペットボトルの「水」、そしてポカリスエットやOS-1などの「イオン飲料」です。高齢者や乳幼児のいる家庭でまとめ買い。生産が追いつかず欠品につながったと言われています。さらに、冷房による電気代も跳ね上がったはずです。今年の夏は「想定外の出費」がかさみました。結果、涼しくなった秋以降、主婦たちが財布の紐をしばり消費に対して「節約モード」になることは自然の流れではないでしょうか。少しだけ秋の気配をみせた東京の街で「節約モード」の気分が「黒」ファッションとして表出されてたのではないか。

 

もう一つが人々の潜在的「恐怖、不安」です。噴火、豪雨など自然災害の多い2018年です。異常な猛暑を経て迎えた9月1日は「防災の日」。この日放映されたNHKスペシャルは「南海トラフ巨大地震」がテーマでした。南海トラフ巨大地震の最新データにより、今後30年以内の発生確率は70~80%。最大マグニチュード9.1の地震による激烈な揺れと大津波で死者は最悪32万3千人、経済損失は1410兆円に上るという試算が公になっています。

 

様々な研究者が諸説発表されているという前提の上で、商品戦略のコンサルタントとして、各種科学的データ、トレンドやジンクスに着目している実務の現場から見ても、自然界の流れを感じずにはいられません。

 

記録的猛暑の後には「マイナス成長」というジンクスがあることは説明しましたが、記録的猛暑の後に大きな地震が起こっている事実(1994年と2010年)。エルニーニョなどの気象との関わりも指摘されています。万物流転の法則は物理学の真理です。南海トラフ巨大地震80%という数字は「いつやってきてもおかしくない」と考えることが自然ではないか。街角の「黒」の出現は、人々の潜在的な心理とリンクしているのではないか。全ての人がそうではないにしても潜在的な「不安感」の点在であり、人間心理のサインではないか。

 

 

商品リニューアルコンサルティングを通して、事業を新しいステージに導くお手伝いをすることが深い喜びであり、それがわたくしの使命です。未曾有の災害を防ぐことはできません。しかし「近い将来必ず来る」と肚を決め商品リニューアルの仕組みを定着させることができれば、いざという時、御社ビジネスの機運は大きく変わってゆきます。

 

非常事態で最も大事なことは「心の安定」です。経営者は生き抜かなくてはなりません。生きて行動し続けなければなりません。非常時、経営者は、従業員とその家族のために、地域のために、ひいては日本を再生させるために、力強く起ち上がらなければなりません。

 

必ずや自社商品サービスをどうしてゆくのかを考えます。自社商品サービスを抜きにして経営を再生させることはできません。冷静にスピード感を持ちながら、心を強くいっそう強くして立ち向かわなければならない苦境、世がパニック状態にあるその時から考えはじめ行動するのでは遅すぎます。心潰えて起ち上がることもできないかもしれない。様々な状況に流されてスピード感を持って、事業の舵をきることができない事態に陥ります。

 

ビジネスの再起にかけ瞬発力を発揮するために、また、使命感を持って職務を全うするためには、今からの「思考の準備」が必要不可欠です。目に見える防災対策と「思考の防災対策」の両方が必要不可欠です

 

平常時でも非常事態でも、商品リニューアル戦略において、基盤となる着眼法は変わることはありません。顧客と顧客の生きる世界観がガラッと変わる世界において、従来の考え方では事業継続は不可能です。顧客心理も非常時には教科書通りにはゆきません。全てが想定外、全てがイレギュラーです。全てが新しい状況で変化に満ちているのです。だからこそ、商品リニューアルの出番です。商品リニューアルの仕組みを発動させることが「死中に活」となり、心の安定とブレない経営戦略策定に繋がってゆきます。自社から拡がって、地域をそして日本を再起させる原動力になります。

 

未曾有の災害は、来る。

自社の使命とは何か。自社の商品サービスの存在意義、そして本質的な仕組みづくりが問われています。今一度、商品戦略の仕組みを見直す時です。先送りせずに、今ある主力商品にテコを入れることで実践と検証、改善を繰り返し、仕組みを定着させてゆくこと。チームとして動くこと。それがいざという時の「備え」であり、いざという時に自社を危機から救う魔法の杖になるのです。