少子化と玩具 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第87話

弊社が開催している商品リニューアル戦略セミナーにおいて「マーケットの縮小と飽和」についてご質問をいただきました。具体的には「わが社は〇〇メーカーですが、超高齢化と人口減で、自社商品の先細りを感じています。リニューアルしても厳しいのではないか。切り捨てて新しいジャンルで勝負した方がいいのか、或いは・・・」という本質的な戦略についてのご質問です。わたくしは「商品リニューアル戦略が本質的に自社に根付くようになれば市場飽和はあり得ない」。そうキッパリとお伝えしています。

 

 

壮大な市場の話から、少しだけ半径5メートルの身辺雑記にお付き合いください。

わたくしはこの数日間、知人が入院いたし東京都内にある総合病院に通っております。院内にはコンビニエンスストアのファミリーマートが入っています。通常の日常品のほか、院内で使う衛生用品、介護用品、寝巻きやスリッパなどの入院アイテムなどが所狭しと陳列されています。街にあるコンビニエンスストアとは異なりエンターテイメント性を抑え、コンビニと「薬局」のハイブリッドな雰囲気です。

 

知人に頼まれたアイテムを買うために、店内をぐるり。探していた薬を飲みやすくするゼリーに手を伸ばしたとき、視界の端で異彩を放つあるモノに気づきました。

 

それはプラスティック製で、長さが大人の腕ほどの何かです。取っ手が赤く、軸は水色、先端は黄色のカラフルカラーのド派手さ。幼稚園や保育園のおもちゃボックスには必ず入っている「玩具」。子供たちは遠くにあるものをつかんだり、床にばらまいた偽札をつかんだり、フェイクのピカピカの100円玉を取ってみたり・・・。そのモノとは「マジックハンド」です。マジックハンドが院内のコンビニエンスストアに数十本束ねて陳列してあったのです。もちろん値札がついています・・・一体だれが買うの?

 

正式名称は「カラフルアイアンハンド」で価格は「1,296円」です。同じ戸棚には介護用品などの商品群。カラフルアイアンハンドは、一般常識では玩具ですが、なぜか1アイテムだけでの単独陳列。お見舞いに来た子供のための玩具でしょうか?

 

しばらく店の外から窓ガラス越しに店内を観察していました。すると信じられないことに60代くらいの女性が1本購入しているのです。後を追いかけてみると、なんと、病棟にいる80代くらいのお母さんに手渡していました。

 

コンビニエンスストアの店長に話を聞けば、

「この病院にはかつて産婦人科と小児科があり、おもちゃをたくさん置いてました。今は子供たちやママたちがいなくなりましたが、マジックハンドだけが牛のよだれみたいに売れ続けてきたんです。今は、感染症対策で直接モノに触れられない時や、体が不自由な方で床に落ちたものを拾ったりする時に使うみたい。それから意外と看護師さんが買って行くんです。で、時々お見舞いにいらした方で、“ママ買って〜”なんてお子さんに売れたりしてます。売れ方が逆になっちゃってますよね」と。

 

かつて玩具だったカラフルアイアンハンドが、いまではシニアマーケットで活用されている一例です。超少子化で玩具業界も喘いでいます。冒頭のご質問のように、製造メーカーのほとんどが「マーケットは縮小するばかり」で「市場飽和」を理由に苦悩されています。が、マジックハンドのようにロングセラー化に成功している企業があることも事実です。

 

カラフルアイアンハンドを製造している株式会社トイボックスは創業50年余。子供の玩具からスタートした会社です。カラフルアイアンハンドについてのアマゾンのレビューでは「おもちゃだから“カチャカチャ”という音がしてしまう。病院では使いにくい」と欠陥を指摘しています。トイボックス社では、商品リニューアルを実施し「静音」タイプも後発でリリースしています。面白いことに、実際のコンビニエンスストアでは「カチャカチャ鳴る玩具」の方をセレクトしています。その背景には、子供にも「玩具」として売れている実績があるからだと想像します。絞り込んでいるようで絞り込んでいない参考例のひとつです。

 

 

マーケットは飽和している。マーケットはまだまだ広がる

ヒットはのぞめない。リニューアルしヒットを仕掛ける

御社の、社長の、幹部のみなさまの口癖はどちらに近いでしょうか?

 

「考え方」のわずかな差が事業の明暗を分けます。経営者が、幹部社員が「無理だ、マーケットは飽和している。もうこれ以上売れない」と思った時にすべてがその通りの方向に進んでゆきます。「巨人と玩具」という古い日本映画があります。原作は開高健氏です。製菓メーカーの宣伝部を舞台にした映画で、宣伝部は「彼らは考えない。頭の中は空っぽ。現代の人間は赤ん坊以下、犬以下」だからガンガン宣伝広告で煽りモノを買ってもらおう、と消費者を揶揄するセリフがあります。

 

この映画が上映されてから60年の今、わたくしたちの時代はどうでしょうか。少なくとも様々なツールで情報を得て考えるようにはなっているのではないか。かつての「巨人」は、時代の変化にのまれ変化に対応できず思考停止。果たして「考えない、頭の中は空っぽ」、逆転してはいまいか。

 

思考が停止してしまったその先には「挑戦」は生まれません。ゆえに「失敗すること」もありません。そして失敗がない代わりに、「成功」は生まれません。状況はなにひとつ変わらないということです。

 

物あまりの時代です。御社の提供する商品サービスを本気で必要としている人はいません。そして、いまこの瞬間に、本気でヒットを信じ仕掛け、熱量を持って本気のセールスを実装している企業があります。リアル店舗やネット店舗でお客様との熱いとコミュニケーションを図っています。

 

さて、御社は「変わる変わる」と言ったっきりになってはいないでしょうか? 市場の変化が不安でしょうか、心配でしょうか、憂鬱でしょうか? マーケットよりも注視しなければならないのはお客様のライフスタイルとそれに伴ったお客さまの心理変化です。わたくしが提供しておりますコンサルティング手法はシンプルに表現すれば「変化対応コンサルティング」です。市場の変化に合わせて企業が変わってゆく限り、マーケットの飽和はありません。まずは自社の、ご自身の「思考停止」を解除いたしましょう。そして戦略を策定し、実行に移していきましょう。

 

物事は早めに着手するがよい。早すぎると思ってぐすぐすしていると遅すぎてしまう」。古くから伝えられている商売の鉄則です。コンサルタントを上手に活用して、次のステージに飛躍しましょう。先細っていた玩具が、オトナ市場で役に立つ「道具」として「もうひとつの手」として重宝される時代です。ひらめきを仕組みへ。御社の、次の一歩を楽しみにしています!