商品リニューアルの心得「川の流れは同じだが、流れている水はいつも違う」 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第34話

老舗企業のピンチは「主力商品の売り上げ激減」である。

今から8年前の2008年3月から4月に実施された「〈老舗〉に関するアンケート調査」の結果です。国内最大手の信用調査会社帝国データバンクによる、国内の100年以上続く老舗企業814社を対象にしたものです。

設問は「創業以来の危機となった出来事、事件」で、第1位が「戦争」で34.2%。

次いで多かったのが「主力商品の売り上げ激減」で27.5%です。第3位の「資金繰り」21.4%を超えています。移りゆく経済環境や消費者ニーズなどへの対応が難しいことを示しています。

 

さらに調査から約10年を経た今、国際情勢の変化、日本の自然災害による環境変化、人口減などますます厳しさを増していることから「主力商品の売り上げ減」によるピンチ感はさらに深刻化していると想像できます。

わたくしどもの商品リニューアルの現場でも実感いたします。理由は、「リニューアルヒットを狙って主力商品を改善しました。消費者に受け入れられるかぜひご指導いただきたい」と、試作品を手にスポットコンサルティングをお申込みになるお客様が増えているからです。

ある経営者はわたくしのところに来る前に、銀行から紹介された著名コンサルタントのところへ試作品を見せに行ったそうです。東京進出を狙っている旨を伝えると「その商品では東京では勝負できません!」とキッパリ。そして自身が手がけた成功事例をいくつもあげられ、それをアレンジし落とし込んだ提案があったそうです。がこの相談者はモヤモヤがおさまらない、とのことでわたくしに相談にいらっしゃいました。

 

さて、前出の帝国データバンクの調査ですが、さらに踏み込み「創業以来のピンチをどのように乗り越えたか」という問いを投げかけています。その回答の一例が以下の通りです。

 ・取り扱い商品の変更

 ・新規事業の立ち上げ

 ・販路開拓

 ・新商品開発

 ・リベートなどの商習慣の見直し

 ・ひたすら耐える

 ・コンサルタントの導入 etc

 

キッパリと申し上げたいのは、「右」に進んでも「左」に進んでもどちらでも良い、というのがコンサルティングの現場での実感です。わたくしはコンサルタントとして最終的には「事業発展」と「企業生命力の向上」に必ず導くという覚悟を持ってのぞんでおります。商品リニューアルの基本を押さえておくことは当たりとしても、ゴールに向かうまでの「道」は、一社一社の個性により全て異なる道です。目の前には色のついた世界ではなく、純白の世界が広がっています。不思議なことに成長していく企業は一社一社みな異なり、個性を発揮しています。そうでない企業は皆どこか似ています。

 

過去の延長で成功する時代は過ぎ去りました。日本は不確実さを増し、世界経済も激変し、企業の生存競争がよりハードになっています。日本の終身雇用も終焉を迎えていますし、格差という形で個人にしわ寄せが及んでいます。

過去の成功事例があって、当時を生きる人々のだれが今の状態を想像できたでしょうか。その当時のお客様と今のお客様は同じなのでしょうか?人間の顔も形も人生も、さほど大きく変わってはいないかもしれません。変わっていくのは「感じ方」「価値観」「大切にしたいこと」といった「心理」です。

 

過去の成功事例の中で設定した「お客様」と今のお客様では、まったく心理状況がことなっているということに気づかなくてはなりません。どの時代を輪切りにしても、その時々の「お客さまスタンス」まで踏み込んでエッセンスを抽出し、現在に落とし込まない限り事例活用はできません。むしろ中途半端に取り入れれば害悪ですらあります。現代は過去の経験、知識、過去の事例で乗り切れる時代ではない、という現実を謙虚に受け入れるとすれば「結論」や「答えありき」のコンサルティングなどできるはずがありません。コンサルタント自身の経験から成る、はじめに答えありきの「計画」の提示は最も危険だと戒めております。

 

わたくしは限られた時間の中でのスポットコンサルティングでの「試作品がヒットするかどうか」というご相談に対して、常に「それをだれが買うか」という、一点に絞ってお伝えしております。ポイントはお客様から見てどうか、お客様の空気感の中でどうか、お客様の心のタイミングにおいてどうか、ということです。

「お客様の変化」に向かい合っておられますでしょうか。

そのリアルを直視できるよう、今のお客様の変化をキッパリとお伝えすること。それがわたくしの役割であり、そこを乗り越えない限り新しいフィールドは生まれません。再現性のあるノウハウをお伝えすることとは真逆の真のクリエイティブな道を照らすのがわたくしの使命です。

商品サービスリニューアルは経営そのものであり、会社のピンチを救うのは、他でもないその商品サービスを買ってくださる「今に生きるお客様」です。お客様起点の戦略策定が求められています。