売上増に導く「社内マニュアル」の作り方 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第13話

大型連休が開け、初夏の日差しがまぶしい季節となりました。昔から5月はとかく疲れの出やすい時期といわれています。先日お会いした経営者のA氏も元気がありません。聞けば、右腕候補として期待してきた「〇〇さんが辞めることになって、、、」とのこと。よくある話です。本当によくある話であるにもかかわらず、決してなくなることのないテーマです。労働人口減により採用に喘いでいる時代、中小企業にとって人材の流失は大打撃です。

現実的には、事業体の規模を問わず「人」の問題は同じように存在しているのではないでしょうか。前職の洋菓子メーカーでは、1998年当時、全国に350店の店舗がありパート・アルバイトを含めると4千名余りが働いていました。私は本社勤務の中途採用で、350店舗を統括する店舗運営部の販売促進部門に配属されました。

転職したばかりの会社で、手渡された名刺の右隅にテーマカラーの赤色で「創業50th」のロゴマークが入っていました。私の肩書きには「プランナー」と書かれていました。そして、いちばん最初の仕事であり入社条件のミッションが「社内用マニュアル」づくりでした。自社で製造した洋菓子を販売するための直営と買取店舗が100店、200店と拡大成長していく中、当然オペレーションの問題が生じてゆきます。多くは「人」によって生じる問題です。例えば店長が休みの日、パートとアルバイトだけの店舗ではさまざまな問題が生じることがあります。

 商品のことがわからない、説明できない

 お客様からの質問に答えられない

 質問に答えても人によってバラバラ

 意図と違うディスプレイを展開をしている

 お客様のクレームに対応できない

 主観のセールストークで誤解を与えている等々

上記のことはよくある話です。ですが、ふだん顧客として買い物をしていると未だにお店の接客に驚かされたりがっかりさせられたりします。このような人の問題を解決しなければ、売上が上がるどころかイメージダウンにつながる、そう気づいた現場からあがってきたのが「販促マニュアル」でした。店長不在や本社指示がなくても、新人パートやアルバイトが動ける指示書がほしい、ということでした。

必要性はわかっていた、ということでしたが、創業から50年たっても社内マニュアルがなかったのはなぜか。それは、「だれもマニュアルを作りたがらない」という経緯があったと聞かされました。

先送りできない現状となり、いよいよマニュアル作りに営業部が動き出しました。当時、自社に企画部門があり、コピーライター、グラフィックデザイナー、パッケージデザイナーという専門職が販促ツールを作っていました。部長がマニュアルづくりの協力を求めにゆくと「それは(マニュアルづくりは)クリエイティブじゃないから私たちの仕事ではない。営業で作ってください」ということで、跳ね返されました。

そして営業部門で作ることになったのですが、現場は「営業の仕事じゃない」「売上につながらないから嫌だ」「忙しい」「書くのが面倒」「苦手」「パソコンが使えない」等々、さまざまな理由でだれも着手できない状況でした。確かにITも発展途上の会社でシステムはWindows95、98、2000へと変遷していく時代でしたが、社内にはワープロを使って文書を作っている先輩もいました。

メーカーの現場に立って実感したのは「社内共有のマニュアルづくりって、だれもやりたがらないんだな」ということでした。店舗を統括しているマネージャーたちが「数字(売上)に繋がらない仕事だからイヤ」とキッパリ放ったことを強烈に記憶しています。「めんどくさそう」「直接売上につながらない」という理由でマニュアル作りがたらい回しになっていたのです。いかがでしょうか。ウチとは無関係だよ、そう笑ってしまう方もおられると思いますが、心の中で「ウチのことだ」という会社もあるのではないでしょうか。

さて、マニュアル作りを命じられた私は、たった一人でマニュアルの原型を作っていきました。経験はほとんど無しで、その前に勤めていた年賀状と婚礼印刷メーカーのクリエイティブ部門で作った「催事ハンドブック」という社内教育マニュアル一冊。これも、だれもやる人がいなくて新人だった私が担当しました。

洋菓子メーカーで使うマニュアルは、新商品やリニューアル商品、催事商品を均一のレベルで店舗販売するための販促マニュアルが主です。コンテンツは、B4サイズの用紙で5ページ以上のものです。クリスマスなどの催事の場合は20ページ以上になる場合もあります。製造部門になると、商品製造にかわるマニュアルや商品レシピなども含まれてゆきます。

例えば、リニューアルした商品の販促マニュアルであれば、

企画意図、ネーミング意図、商品知識、ラインナップ構成、商品展開図と手順、冷蔵ケース内の陳列指示、販促ツールの構成、使い方、販促ツールオーダーの仕方、お客様のQ&A、制服の着こなし、セールストーク、展開スケジュール等々です。誰もがオペレーションできるよう、わかりやすい言葉を使いビジュアルで表現していきます。さらに、それらの商品リニューアルの実際の様子を写真や動画または文書で記録、売上数値、お客様アンケートの回答をマニュアルの一番最後に添付しておきます。表紙をつけて製本し、完成。すべて手作りでできます。

こうして、販促マニュアルが現場で活用されはじめると、次から次へと社内マニュアル製作の声がかかりました。部署を超えて商品開発部門の商品知識マニュアル、人事教育部門の教育マニュアル等に着手し、オペレーションの問題が少しずつ改善されていきました。それに伴って、人の問題も減少していきます。新しいパート、アルバイトへの指導も効率化されます。販売環境の安定化となり、結果、店舗の売上も改善され、売上増へとつながっていきます。

社内マニュアルの不在。

しっかりできていますよ!という会社は安心です。大手企業の場合あるのが当たり前で、社内でデータシェアできているのが現状でしょう。しかし一方ではマニュアル通りに進めたことでかえって「人」の問題が溢れ出し本末転倒となっている、という側面もあります。つまり社内マニュアルも時代の変化に合わせて、リニューアルしていくことが要請されています。

冒頭の会社ですが、社内マニュアルの必要性をご説明しました。すると、「うちはまだまだ小さい会社なので必要ないと思う。口で伝えればいいんだから…」というお返事です。しかし、話を深くお聴きしていくと「コミュニケーションが下手なんだ」「ホウレンソウとか基本的なことができない」「教えてるのにわかっていない」等々、十分に伝えきれていないし、伝わっていないことが想像できます。そしてついには、辞めていく人を責めるという、残念な言葉を口にします。

人を責めるのは、気持ちの良いことではありません。そして、つらいことです。なぜなら、その人を採用したのが、何を隠そう、経営者ご自身なのですから。ますます肩が落ちてゆくばかりです。

社長、そろそろ「負のスパイラル」を断ちきりましょう!

商品戦略における御社独自の「仕組み」をつくりましょう。そうすれば「人」を責める必要がなくなります。人の問題でいちいち自信喪失したり、裏切られたと憤ることもなくなります。人の問題が生じたら「仕組みができていなかったんだ」と検証し、次のステップへと改善していく。それだけのことです。大事なエネルギーは、責めることに使うのではなく仕組みづくりに使えばいいのです。迷いもなくなります。

商品戦略において、商品リニューアルによる小さなブームの山を作り収益を上げる。そのためには、画期的なネーミング、売り方、見せ方、社内共有化、これらがひとつの循環となっていること、仕組みになっていることが肝要です。もっと大事なことは、経営者自らが一つ一つの施策が「つながっている」、ということに気づいておられるかどうかです。人の問題も「その人に問題がある」と考えるのではなく、仕組みがどうなっているか、と考え方を変換できるかどうかです。

商品戦略にはおいて、社内マニュアルは必須の武器です。

弊社商品リニューアルのコンサルティングでは、社内マニュアル、社内プロモーションこそが売上に直結すると申し上げています。それは当たり前のように実務を重ねてきた前職時代からの肌で感じ、今現在の実務を通しての強い実感です。「マニュアル」という言葉に抵抗感がありますでしょうか。では、社長が指揮官となってネーミングを社内で考案し、御社独自の仕組みを作ってゆけばよいのです。陽に向かって伸びてゆく新緑のごとく、スイッチを切り替え、世界にたった一つの御社独自のビジネスを大きく豊かに成長させてゆきましょう!