スパイラル状に収益が上昇するネーミングの魔法 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第33話

東京都立上野動物園で6月に生まれたジャイアントパンダのメスの赤ちゃんの名前がシャンシャン(香香)に決まりました。

 

おもしろいことに、名前がついたとたん、プロモーションが具体的になりメディア露出度が高まり、人々の気分も一気にテンションアップ。さまざまな媒体で取り上げられ配信されています。このように「ネーミング=名付け」には、それまではぼんやりとしていた世界を一転させ、色鮮やかでくっきりとした世界へとビジネスのパラダイムを変える強い力があります。

 

さてこの「シャンシャン」の誕生こそ上野動物園にとってまさに「商品リニューアル」です。お父さんパンダのリーリーとお母さんパンダのシンシンという上野動物園が持っている「リソース」を活用し、赤ちゃんパンダが生まれる。赤ちゃんパンダの名を募集し、たくさんの人が参加、約32万の応募数となる。果たして「シャンシャン」という名前がつけられる。報道される。来場者が増える、収益がスパイラル状に上がりビジネスが復活していく・・・。

 

シャンシャンというネーミングを起点にして商品化への道が生まれます。ロゴマーク、トレードマーク、パッケージが作られ、様々な商品として流通。リアル店舗だけでなく、ネットマーケットにも展開されます。同時に、テレビやラジオ、ネットでも採り上げられ、お客様とのコミュニケーションが活発になります。

 

上野動物園から足が遠のいていた「休眠客」が再び目覚め、ますます既存客も増え、日本から世界からお客様がやってくる。来場者数の増加は必然でしょう。一方、再び上野動物園の注目度がアップし来場者数が増えたときに、どんな新しい仕掛けを見せることができるかによって、その後の再来園率が変わっていきます。名前のごとく「客寄せパンダ」で一時のブームで終わってしまう場合もあります。

 

このネーミングに関する声で、たいへん興味深いのが「サウンドが好き」いう街の声です。報道翌日の朝のニュース番組における街頭インタビューでは「しゃんしゃん、って、すごく覚えやすい」や「響きがかわいい」「なんか元気が出る感じ」と老若男女問わず、具体的に「音が良い」と伝えていました。聞き逃してしまいそうな自然なコメントですが、これは顧客心理を表現するとても重要なコメントです。

 

ネーミングにおける「音」には性格があります。明るい音、かしこい音、知的な音、元気な音、柔らかい音、とんがっている音、重厚感のある音、、、。このシャンシャンというネームを分解し、母音にふくまれる「あ」は口を大きくひらくのが特徴で「明るさ」を感じされると言われています。一方、口を閉じる「ん」という母音には「知的、重さ」があり格調を感じさせる音の代表音です。音の響き全体見ると、「しゃんしゃん」といえば日本では鈴鳴りの音を指します。

 

今の日本に視点をあげてみましょう。国政、日本を取り囲む国際情勢を考えれば、時代の気分は「不安」や「恐怖」の方に向かっている、といえるのではないでしょうか。その反動に、例えば、皇室の慶事、ハロウィンなどのイベントへの熱狂、購買活動では「自分の城」で自由に買い物ができるネット通販への流れなど、どこかで「明るく楽しく自由な夢」を求めている心理があるのではないでしょうか。

 

鈴なりのサウンドとともに現れて、明るく、そして格調高い「シャンシャン」という名の赤ちゃんパンダ。その他大勢のパンダの赤ちゃんとはちがう、わたくしたちを明るい世界へ導いてくれるような世界観。なんとなく、景気までよくさせるような鈴なりの響き・・・。わたくしたちはこうして自由自在に頭の中で「ものがたり」を作りあげ、「元気が出る」「景気良さそう」「縁起が良い」などと上野動物園に行く正当な理由を見つけ、実際に足を運び、SNSに発信したり、グッズを買ったり、ネット通販で買い物をするのです。このネーミングがプロからではなく「一般公募」から出てきたことも象徴的で、わたしたちの「夢や願望」を映し出していると考えられます。

 

ネーミングだけで魔法がかかり奇跡が起こる時代は終わりました。お客様の夢や願望を満たすネーミングを作り、売り方、人と人のつなぎ方を含めた出口まで世界観を精緻に作りあげていく。それが今の時代の、商品リニューアル戦略における「ネーミング」です。

 

顧客が待ち望んでいるような「願望」を満足させる優れたネーミングをつけて、流通、広告宣伝、プロモーションまでしっかりと一本の軸を通してゆくことがヒットの大原則なのです。

 

いま構想されているネーミングには入口と出口は一本の道でつながっていますでしょうか?

ひとつの世界観が細部に渡ってイメージできるほど具代的に描けていますでしょうか?

お客様の夢や願望を引き出し、お客様の見たい世界を描くことができていますでしょうか?

商品リニューアルにおいて、ネーミングは単なる「名付け作業=手法」ではありません。商品世界観を再定義したとき、その起点となる包括的なクリエイティブとしてわたくしどもでは重きを置いてお導きしています。