成功するパラダイムシフトの法則 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第28話

洋菓子メーカーで商品プロデュースをしておりました流れで、和菓子店からのご相談をいただく機会が増えております。

案件は、今後の展開についてです。ご相談にいらっしゃる会社の多くが100年以上の老舗です。時代時代の波を乗り越えられてきたという事実をお持ちで、しっかりとした基盤をお持ちの上でさらに飛躍したい、ということです。

 

2015年のNTTタウンページの調査によれば、全国に和菓子店は14,674店舗あります。例えば、全国のコンビニエンスストアは約50,000店舗の約30%にあたります。ちなみに郵便局は約25,000店で、コンビニの半分です。また創業100年以上の老舗企業が多いのも和菓子店の特徴です。一方、インバウント需要で菓子市場が売上増加であるにもかかわらず「100年以上の老舗については増収上昇率が最も低い」という結果が出ています。(2017年「国内菓子メーカーの経営実態調査」帝国データバング調べ)

和菓子店はコンビニの3分の1。超少子高齢化、人口減、インバウンド需要・・・など世の中の一般的な流れの中にあり「いがいと和菓子屋さんて頑張ってるんだな。老舗が多いんだな」という印象です。

 

では、商品リニューアルコンサルティングの現場ではどうか。

国内菓子メーカーの公式Webサイトを定点調査していますが、確かに、どちらの和菓子屋さんも「老舗企業としての歴史」を訴求しています。自社の「歴史」の方にスポットを当てている企業がとても多いです。注目すべきは、写真の扱い(大きさ、点数)とテキストの量です。「会社概要」「会社の歴史」「老舗のこだわり」というコンテンツの中に表現されています。

それに比べ、商品に対するコンテンツがあっさりしている会社が多いのも特長です。ネット通販をされている会社がほとんどですので、商品カタログとして上から俯瞰した写真(ブツ撮り写真)が多く並んでいます。食べたくなる買いたくなるを訴求したシズル感のある「イメージ写真」の起用が少ないです。

さらに、商品アイテムを確認していくと、「おまんじゅう」「どらやき」「羊羹」「練り切り」「お団子」「きんつば」というように、和菓子といえば〇〇とだれもが想起できる歴史のある定番商品を販売しているお店がほとんどです。

 

これを生活者目線で消費者として拝見し、感じることは、

・ほとんどが「老舗」「歴史」をアピール

・まんじゅう、どらやき、きんつば・・・ラインナップがどこの会社も似通っている

・商品写真が「お弁当」みたいになっていて美味しそうじゃない

 

これって個人的な感想ですよね、というご批判もあるかと思います。ですが、実際に5540人を対象にした調査※では、「和菓子を食べるタイミング」の第1位が「お土産でもらったとき」、第2位「普段の家のおやつ」、第3位「家族が買ってきた時」となっており、半数以上の人が「和菓子は自分では買わない」傾向にあるのです。また、冒頭で全国に約1万4千店ある和菓子店ですが、年々廃業により減少している事実もあり、右肩下がりの厳しい状況にあります。 (※2013年ニフティ「和菓子についてのアンケート・ランキング」)

 

長々とデータから読み取れる現象をお伝えしてきましたが、相談にいらっしゃる和菓子店の多くは、高い変革意識を持ちながらも「老舗のプライド」「長寿企業としての軸」から、「うちは100年以上の歴史がある。その間の時流の変化に耐え、なんとか今まで続けてこられた。やはり老舗としての自社の強みを訴求し続けていきたい」とおっしゃるのです。

わたくしとしては様々な角度から検証し、イノベーションの必要性をお伝えします。が、なかなか受け入れられません。新しい考え方とその実践に対する恐怖心、そしてニュートンの「慣性の法則」にあるように、ある流れができている中で新しいことを始めることの大変さ、おっくうさ・・・「現状維持がラク」。そんな人間心理が飛躍を妨げているのです。

 

こうしたお店や経営者に対して、目覚めさせ気づきに導くのが「顧客の声」です。そう、今お店に来てくださっている「お客様」に他なりません。例えば一つの事例として、アンケートの実施があります。自店の魅力や購買理由を聞く設問に対して「商品の味」と「価格」が高ポイントであり、「老舗だから」という回答が低く、会社の歴史が買い物のインセンティブにはならない。ということがわかり、経営者が潜在的に強く思っていることが、お客様にとっては重要でない。お客様にとっては関係ないことが明らかになる場合があります。

 

生活者目線で考えれば、至極当たり前の感覚です。老舗企業として世界中に支持されている「とらや」が目の前にあったとしても、食べたくないものは買わない。その時ショートケーキが食べたければ、離れたところにあったとしても、コンビニスイーツで無名ブランドのショートケーキを買うのではないでしょうか。会社の歴史でお菓子を選んでいるわけではない、ということです。(もちろん商品サービスの特性によって、購買行動は異なってきます)

 

相談にいらっしゃる和菓子屋の方々には、一度「老舗」というものを横において、自社の商品サービスの本当に支持されている特長はどこにあるのか、棚卸しをしていただいてます。

 

創業60年を目安に老舗意識が芽生え「老舗をとったら何も無くなってしまう、無理だ」そうおっしゃる経営者がとても多いです。そこに耐えプライドを捨てる。「当たり前」「思い込み」「既成概念」「疑いもなく信じてきたこと」・・・こういったことを一つ一つ自覚し、お客様には関係のない考え方を一時的に「不要BOX」へ移動する。こうした地味な工程を経て初めて、新しいものを育てるスキマが生まれます。果たして商品リニューアルの土台ができてゆきます。

 

決められた時間のなかで、常に結果を出さなくてはならない事業経営です。社長ひとりでは永遠にパラダイムシフトを起こすことはできません。コンサルタントを上手に利用していただくことで、次代をしなやかに駆け抜け、あらたな100年を生み出す企業に変わってゆけるのです。

コンサルタントとの出会いこそが、次のフェーズに向かって乗り換えとなる千載一遇のチャンスです