商品テストの具体策 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第37話

商品の欠陥がどこにあるか。そのヒントを教えてくれるのは、他でもない「お客様」です。お客様という存在はわたくしたちが潜在的に持っている魅力を教えてくださいますし、その逆でもある欠陥を教えてくれる存在でもあります。

わたくしは婚礼印刷と年賀状印刷に特化した印刷メーカーのクリエイティブ部門にSPプランナーとして5年、その後、洋菓子メーカーのプロモーション部門に10年おりました。どちらのメーカーでも、商品開発のプロセスの中で、必ず「商品テスト」を実施しておりました。

印刷メーカーでは自社開発のブライダルカードや年賀状の「絵柄(デザイン)」を想定ターゲット層に合わせてモニター調査。その結果を分析をしデザインを選別していきました。

洋菓子メーカーでは、バレンタインなどの催事商品プロジェクトの際、ターゲット層である女性社員にモニターとして参加してもらい、パッケージの好感度調査を実施していました。

日本において「商品テスト」という言葉を浸透させたのは、朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」のモデルとなったロングセラー雑誌「暮しの手帖」です。同誌は広告を掲載しない雑誌として有名。理由は、広告をのせることでスポンサーの圧力がかかり、商品品質の事実を伝えられなくなるということです。故・編集長の花森安治氏は「〈商品テスト〉は絶対にヒモつきであってはならないのである。」(商品テスト入門/1969年)という言葉をのこしています。

わたくしたち作り手、売り手自身、さまざまな経験を積み「これが絶対に売れる!」と思って日々判断しているつもりです。しかし、花森氏の言葉にあるように、スポンサーの圧力に屈してしまうのも人間心理です。

このように人間心理が働くことを「バイアスがかかる」と表現しますが、最近の脳研究では、実はわたくしたちはさまざまな経験を積み、無意識のうちに勘違いをし判断ミスを引き起こしているということが実証されています。こうした思考の偏り、クセを「認知バイアス」と呼んでいます。

簡単なテストをしてみましょう。

下のイラストを見てください。

二人の髪型は右分けと左分けで異なっています。

一般にどちらが好印象をもたれるでしょうか?

 

 

・右分け(イラスト右)のほうが好印象

・左分け(イラスト左)のほうが好印象

 

一般的には、イラスト右の「右分けの方が好印象」となります。

いかがでしたでしょうか?上のイラストは左右反転させれば同じイラストですが、絵の左側に特徴がある「右分け」の方が印象に残ったのではないかと思います。脳の仕組みから、一般に右利きの人は視野の左側を重要視すると言われています。

この法則でゆけば、

 ・魚料理は頭を左に置いたほうが食欲をそそる

 ・本やポスターは左側にイラストを描いたほうがお客様の頭にはスッと入る

 ・スーパーの目玉商品は左側の棚に並べたほうが売れる

身近な例でゆくと、名刺のロゴマークが左側なのも納得です。例えばお酢のミツカンが出している「追いがつお つゆ」。1998年に発売されたロングセラー商品ですが、2003年まではミツカンのロゴマークはラベルの右側。2004年から企業ロゴを「mizkan」とリニューアルし、マークを左側に再配置し刷新しています。

 

わたくしども作り手、売り手は判断をするときに様々な思考のクセがある上に、心理的作用が働きます。

これは買い手であるお客様にもあてはまります。

売り手が、どんなに理論上で「売れる仕組み」を考え仕掛けたとしても、お客様のお買い物は「そのとき」「その場所」「その気分」という「直観」で、買い物をしていることが多いものです。お客様は買った理由を「好き」や「嫌い」や「なんとなく」という言葉で表現します。

 

商品リニューアルにおいて、作り上げたものは現場に出す前に商品テストをし、どうお客様が反応するかどうかを確認する必要があります。そのとき最も重要なことは、商品テスト結果のどこを視るか、という視点です。視るべきは「嫌い」「不快」「好きじゃない」「感じがよくない」というようなネガティブなお客様の反応です。お客様は不快なモノ、コトに決してお金を払いはしないからです。ですから、自社の主力商品やサービスが伸びていないとき、まず考えるべきことは「商品の欠陥」がどこかにある、です。そこを改善するために商品テストを実施し、お客様の反応を吸い上げ、好きになってもらえないものは商品提案の中からハジいてゆくことです。

 

御社には、そうした声をすくい上げる仕組みがありますでしょうか?

お客様が御社商品サービスの欠陥を伝えやすいムードはありますでしょうか?

 

日本のお客様は奥ゆかしく、多くの人が「文句を言うようなことは恥ずかしいこと」という気持ちがあります。ですから、商品サービスに不快、不満を感じた場合は二度と買わずに、静かに離れてゆきます。売上の数字が出てきたときに、その流れを見逃すことなく直視しなければなりません。社内だけで決めずに、買い手がどう感じるかをつかむことです。

商品テストはコストや手間がかかるから嫌だ、とおっしゃる方も多いですが、大きくむずかしく考える必要はありません。例えば、身内から商品テストをしていけば良いのではないでしょうか。商品テストは実施規模ではありません。一番重要なことは思考エンジンです。「どこを視るか」の考え方が社内認識としてしっかり根付いていることなのです。

ちいさな一歩からはじめて、コツコツと泥臭いことの積み重ねていくことがやがてリニューアルヒットへとつながっていきます。

社長、Never give up! です。

 

参考文献:「ココロの盲点」池谷裕二著/講談社 ブルーバックスP62-65