お客様の〇〇〇〇で成功するリニューアルヒットの法則 「社長直轄! 商品リニューアルの着眼点」 第38話

木枯らし一号が吹いた昨日、雨上がりの澄んだ空気を清々しく感じながら、支援先企業へ向かっていました。

わたくしのセミナーに参加されて1ヶ月、弊社コンサルティングを受け新しい一歩を踏み出すと決起された社長とのオリエンテーションです。チャレンジを前に社長と気持ちを高め、充実したスタートとなりました。経営は山あり谷あり、スパイシーな出来事が多い中でもそんな1日があるから頑張っていけるものです。

さて、晴れやかな気持ちで実務を終え、家路へ。神様がわたくしに用意してくたれのは、不穏な空気。思春期真っ盛りのわが子の嵐、大きな嵐・・・。すっかり子の態度に心が乱され気が滅入ってしまいました。がっかり気を落とし、お笑い芸人の捨て台詞「なんて日だ!」がリフレインするばかりでした。( 玄関のドアを開けるまでは最高の日だったというのに!)

 

時間は遡り、先週のことです。100年以上続く食品メーカーの社長がご相談にいらっしゃいました。わたくしの専門分野である「主力商品のリニューアルをかけて更に売上利益の拡大をしたい」ということで、出来上がったばかりの試作品をご持参されました。テーブルに並べ終た社長は、商品を手にしながら、堰を切ったように苛立ちをあらわにされました。

「古崎先生、うちはね100年続いた会社なんですよ。先代から受け継いでね、微増ではありますが何とか売上をあげてきました。しかし業界全体でみれば右肩下がりの情けない状況です。ウチもね、この頃は量販店にやられちゃってる。お客のライフスタイルが変わってきたんでしょう・・・」と。

 

そして「私はね、先代から《顧客の『うれしい』を究めるべし》っていうのを叩き込まれ、商品を作ってきたんですよ・・・、にもかかわらず、です。お客様とは薄情なものです・・・」と。確かにお客様との距離が近い中小企業であればあるほど、経営者も開発者もセールス担当者もみなお客様の『うれしい』が聞きたくて、笑顔が見たくて、日々研鑽、努力を積み重ねているものです。

言うまでもなくマーケティングでは「マーケット・イン」の姿勢で、「お客様ニーズ」「便益、ベネフィット」をあぶり出せ、と型通りに教えられます。「お客様が欲しいものを作れば売れ」、ターゲット層の調査を徹底し戦略化する。もちろん、これは基本中の基本ではあります。しかし、わたくしの商品リニューアルにおいては着眼が異なります。商品リニューアルの現場では「お客様のうれしい」づくりは卒業していただき、むしろ「がっかり」の発見に着目します。

 

お客様は合理性ではなく、心理で動きます

「損失回避(Loss aversion)」の心理というものがあります。行動経済学の主要なテーマのひとつですので、ご存知の方も多いかと思います。

損失回避とは、人間は損と得を同じ天秤にはかけずに、同じ金額なら利得よりも損失の方を大きく感じてしまう。同じ一万円でも、一万円をもらった喜びよりも、一万円を失った不満、苦痛の方を大きく感じてしまう。したがって得する努力よりも損を避けるように努める傾向にある。ということです。シンプルに言えば「満足」や「喜び」よりも「不満・不快・苦痛」の方を大きく感じるのが人間である、ということが証明されています。

 

冒頭、昨日のわたくしも然り。人生にそう多くないであろう喜びの日が、ささいなことで一瞬にしてネガティブに変換され、喜びの記憶を塗り替えてしまいました。タンスの中がいっぱいなのになかなか捨てられないのも同じ心理が働いていると言われています。無意識に「捨てる=損失」という直感が働くので、物を捨てられないのです。

 

人の心理である、不快・不満・苦痛を大きく感じる損失回避性に着眼すれば、ご相談の食品メーカーのとるべき道はお客様の『うれしい』ではなく、本能的にお客様が感じる『がっかり』を発見し、解消していくことが求められているのです。

 

お客様は商品サービスで得られる「満足」よりも、得られなかった「不満足」を大きく感じる、そう肝に命じてください。前出のご相談者様にそのようにお伝えしましたところ、「そういえば・・・」と社長ご自身に思い当たる出来事があり、自社に寄せられるクレームや現場での声をもう一度見直す、という方向に着地いたしました。

 

お客様のがっかりを経営者自身がリアルに実感し、それを商品サービスの改善につなげるためには、精緻な設計が必要不可欠です。「お客様センターを仕組みとして取り入れる」という程度のことなら誰でもアドバイスできることですが「考え方」を理解した上で仕組みを作ることができる企業はとても少ないです。

 

大切なことは「考え方」です。商品リニューアルは経営そのもの。商品リニューアルとは商品の研究であり、それはお客様心理の研究です。

 

お客様の不買が続いている、現状お客様が減っている、とすれば「お客様のがっかり」に気づいてないからではないでしょうか。お客様が飽きっぽいからでも薄情だからでもありません。事業を取り囲むマクロ環境の変化ばかりが原因ではありません。リニューアル商品が良くなかったら当然売れません。リニューアル商品が良い印象を与えたとしても、それをも一瞬にして打ち消してしまうのが、お客様が心で感じる「がっかり感」です。「お客様のがっかり」こそが本質的な起点なのです。

そうは申し上げても、お客様の「がっかり」に向かい合うことは怖いことです。しかし、がっかりに気づけば気づくほど、御社ビジネスの新しいステージに近づいていると喜ぶべきことなのです。その意識革命こそが要請されています。お客様の「損失回避性」を軽く考えたり、侮ってたりしてはいけません。

社長の勇気こそが、御社ビジネスの新しい一歩。一緒に突破していきましょう!